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第13話 疑念

ある夜、茜の夫がこんな事を言う。


「最近、翔太がよく来るな」


「ええ……」


「あいつ、大丈夫か?」


夫も何かを感じ取っているようだった。


「学校にも行ってないらしいじゃないか」


「……そうみたい」


「お前、何か知ってるか?」


鋭い質問だった。


茜は動揺を隠そうとした。


「知らないわ」


「本当か?」


夫の目が探るように茜を見る。


長年連れ添った夫だ。


嘘は見抜かれているかもしれない。


「翔太の様子がおかしいのは確かよ」


「それだけか?」


茜は答えられなかった。


夫は深いため息をついた。


「亜希子も心配してた。翔太がお前の話ばかりすると」


「……」


「まさかとは思うが」


夫は言いかけて、首を振った。


「いや、なんでもない」


しかし、疑念を抱いているのは明らかだった。


その夜、茜は夫の寝顔を見つめた。


この人に真実を話したらどうなるか。


理解してくれるはずがない。


誰も理解などしてくれない。


孫が祖母に恋をする。


祖母がそれを完全に拒絶できない。


異常な関係だ。


しかし、翔太の想いは本物だった。


そして、自分の中にも確かに何かがあった。


それが何なのか、認めたくなかった。

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