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第14話 不法侵入

四月に入った。


新学期が始まったが、翔太は留年が決定していた。


学校には一切行かなくなった。


「もうすぐ誕生日だ」


翔太が呟いた。


「十八か……」


「そうしたら、全部自分で決められる」


茜は不安を感じた。


翔太の目に宿る決意が怖かった。


「まさか退学するつもり?」


「するよ」


即答だった。


ある日、茜が買い物から帰ると、翔太が家の中にいた。


リビングのソファに座っている。


「どうやって入ったの?」


「窓が開いてた」


嘘だ。


茜は戸締りを確認していた。


「不法侵入よ」


「家族なのに?」


翔太の理論は破綻していた。


しかし、本人は本気だった。


「合鍵を作った」


翔太がポケットから鍵を出した。


茜は愕然とした。


いつの間に。


「返しなさい」


「嫌だ」


「翔ちゃん!」


「おばあちゃんの家は俺の家でもある」


狂っている。


完全に狂っている。


「これ以上続けたら、本当に警察を呼ぶわよ」


「呼べばいい」


投げやりな態度。


もう失うものはないという顔。


「そうしたら、全部話す。俺がおばあちゃんを愛してることも」


脅迫だった。


茜は言葉を失った。


その時、玄関が開いた。


夫が帰ってきたのだ。


「翔太? 何してる」


「おじいちゃん……」


翔太は一瞬たじろいだが、すぐに平静を装った。


「遊びに来ただけ」


「そうか。でも、もう遅いぞ」


夫は何も気づいていない様子だった。


しかし、茜と翔太の間の異様な空気を、感じ取っていないはずがない。


翔太はすぐに帰っていった。


しかし、合鍵は返さなかった。


茜は恐怖に震えた。


いつ侵入されるか分からない。


鍵を変えるべきか。


しかし、それをしたら翔太はどうなるか。


より過激な行動に出るかもしれない。

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