五月、翔太の誕生日が過ぎた。
そして言葉通り、高校を退学していた。
「勝手に辞めちゃったのよ、もう本当どうしたらいいか……」
亜希子が怒りを露わにしていた。
ゴールデンウィーク中、亜希子が夫を連れて来た。
翔太の父親だ。
普段は仕事で忙しく、ほとんど家にいない。
「お義父さんも一緒に聞いてください」
深刻な顔だった。
茜は何が来るか察した。
「翔太のことです。あの子、明らかにおかしい。そして……」
亜希子は茜を見た。
「お母さんに異常な執着を見せています」
夫が驚いたように茜を見た。
「どういうことだ?」
「分かりません。でも、ただの祖母と孫の関係じゃない」
亜希子は続けた。
翔太の部屋から見つかったもの。
茜の写真の数々。
日記に書かれた異常な内容。
すべてを曝け出した。
「信じられん」
夫が呟いた。
翔太の父親は黙って聞いていた。
そして、初めて口を開いた。
「茜さん、何か心当たりは?」
全員の視線が茜に集まった。
「……翔太くんの気持ちには気づいていました」
告白した。
一部だけだが。
「なぜ言わなかった」
夫の声が厳しくなった。
「言えなかった。信じてもらえないと思って」
「それで放置したのか」
亜希子が責めるように言った。
「放置したわけじゃ……」
「じゃあ何か対策したんですか?」
答えられなかった。
確かに、有効な対策は取れなかった。
いや、取りたくなかったのかもしれない。
「とにかく、翔太を専門家に診せる」
翔太の父親が決断した。
「強制的にでも」
亜希子も頷いた。
しかし、茜は不安だった。
翔太がそれを受け入れるとは思えない。