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第15話 家族会議

五月、翔太の誕生日が過ぎた。


そして言葉通り、高校を退学していた。


「勝手に辞めちゃったのよ、もう本当どうしたらいいか……」


亜希子が怒りを露わにしていた。


ゴールデンウィーク中、亜希子が夫を連れて来た。


翔太の父親だ。


普段は仕事で忙しく、ほとんど家にいない。


「お義父さんも一緒に聞いてください」


深刻な顔だった。


茜は何が来るか察した。


「翔太のことです。あの子、明らかにおかしい。そして……」


亜希子は茜を見た。


「お母さんに異常な執着を見せています」


夫が驚いたように茜を見た。


「どういうことだ?」


「分かりません。でも、ただの祖母と孫の関係じゃない」


亜希子は続けた。


翔太の部屋から見つかったもの。


茜の写真の数々。


日記に書かれた異常な内容。


すべてを曝け出した。


「信じられん」


夫が呟いた。


翔太の父親は黙って聞いていた。


そして、初めて口を開いた。


「茜さん、何か心当たりは?」


全員の視線が茜に集まった。


「……翔太くんの気持ちには気づいていました」


告白した。


一部だけだが。


「なぜ言わなかった」


夫の声が厳しくなった。


「言えなかった。信じてもらえないと思って」


「それで放置したのか」


亜希子が責めるように言った。


「放置したわけじゃ……」


「じゃあ何か対策したんですか?」


答えられなかった。


確かに、有効な対策は取れなかった。


いや、取りたくなかったのかもしれない。


「とにかく、翔太を専門家に診せる」


翔太の父親が決断した。


「強制的にでも」


亜希子も頷いた。


しかし、茜は不安だった。


翔太がそれを受け入れるとは思えない。

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