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第16話 祖母と孫

家族会議の翌日、翔太が現れた。


顔が青白い。


「聞いたよ」


何を聞いたのか。


「病院に入れるって」


亜希子が話したのか。


「俺は病気じゃない」


翔太の声は震えていた。


「愛することが病気なのか」


「翔ちゃん、これは普通じゃないの」


「普通って何? 世間の決めた枠組み?」


翔太は茜に迫った。


「俺の気持ちは本物だ。それだけじゃダメなのか」


茜は後ずさりした。


「ダメよ。私たちは祖母と孫」


「関係ない!」


翔太が叫んだ。


「年齢も血縁も関係ない。愛してる」


その時、玄関が開いた。


夫と亜希子、翔太の父親が入ってきた。


計画的だった。


翔太を捕まえるつもりだ。


「翔太、一緒に来い」


父親が翔太の腕を掴んだ。


「離せ!」


翔太は抵抗した。


「大人しくしろ」


「嫌だ! おばあちゃん!」


翔太が茜に向かって手を伸ばした。


必死の形相。


茜は一歩前に出そうになった。


しかし、夫に止められた。


「茜、手を出すな」


結局、翔太は連れて行かれた。


抵抗しながら、茜の名前を呼び続けていた。


皆が去った後、茜は崩れ落ちた。


涙が止まらなかった。


これで良かったのか。


翔太のためになるのか。


分からない。


ただ、心にぽっかりと穴が開いたような感覚があった。

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