家族会議の翌日、翔太が現れた。
顔が青白い。
「聞いたよ」
何を聞いたのか。
「病院に入れるって」
亜希子が話したのか。
「俺は病気じゃない」
翔太の声は震えていた。
「愛することが病気なのか」
「翔ちゃん、これは普通じゃないの」
「普通って何? 世間の決めた枠組み?」
翔太は茜に迫った。
「俺の気持ちは本物だ。それだけじゃダメなのか」
茜は後ずさりした。
「ダメよ。私たちは祖母と孫」
「関係ない!」
翔太が叫んだ。
「年齢も血縁も関係ない。愛してる」
その時、玄関が開いた。
夫と亜希子、翔太の父親が入ってきた。
計画的だった。
翔太を捕まえるつもりだ。
「翔太、一緒に来い」
父親が翔太の腕を掴んだ。
「離せ!」
翔太は抵抗した。
「大人しくしろ」
「嫌だ! おばあちゃん!」
翔太が茜に向かって手を伸ばした。
必死の形相。
茜は一歩前に出そうになった。
しかし、夫に止められた。
「茜、手を出すな」
結局、翔太は連れて行かれた。
抵抗しながら、茜の名前を呼び続けていた。
皆が去った後、茜は崩れ落ちた。
涙が止まらなかった。
これで良かったのか。
翔太のためになるのか。
分からない。
ただ、心にぽっかりと穴が開いたような感覚があった。