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第17話 異常

翔太が連れて行かれてから一週間が経った。


亜希子からの連絡では、翔太は入院したという。


精神科の閉鎖病棟。


面会は禁止されている。


ある日、茜に手紙が届いた。


差出人は翔太だった。


震える手で封を開ける。


『おばあちゃんへ


今、病院にいます。


でも、俺は正常です。


愛しているだけなのに、なぜ閉じ込められなければならないのか。


でも、諦めません。


いつか必ず、迎えに行きます。


それまで、元気でいてください。


おばあちゃんのことを思わない日はありません。


朝起きた時、最初に浮かぶのはおばあちゃんの顔です。


夜眠る時、最後に思うのもおばあちゃんのことです。


この気持ちは変わりません。


永遠に。


愛しています。


翔太』


茜は手紙を読み終えると、胸に抱きしめた。


涙が溢れた。


この子の想いは本物だ。


狂気かもしれない。


異常かもしれない。


でも、本物だ。


そして、自分は……


茜は認めざるを得なかった。


この異常な愛情を、完全には拒絶できない自分がいることを。


必要とされる喜び。


求められる陶酔感。


それは確かに存在した。


手紙を仏壇に仕舞いながら、茜は思った。


これは罪なのか。


孫に愛されることが。


そして、それを心のどこかで喜んでいることが。

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