「君の落とした500円玉は私の右手か、左手に入っている」
「左手」
「本当に左手で良いのか?」
先程落としかけた500円玉を友達はキャッチしてくれたのだが唐突なゲームを仕掛けられた。
意味深な笑みは俺をミスリードさせるための、はったりだろう。
だが、俺は見逃していない。
彼が拾った500円玉をどちらかの手に移動させようとした際、左手で拾ったまま開いていない拳を右手で覆いかぶせた動きしかしていない。つまるところ、左手に握ったまま移動出来ていないはずだ。
「左だ」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
彼は両手の掌を上に向けゆっくり開いた。
その掌は…両方とも、空。
「すまん、さっきの瞬間握りきれてなくてこの足の下の側溝に落とした」
「それを先に言え馬鹿野郎」