一生に幾度か『勝負』しなければならないことがある。
祖父の言っていたその言葉の『勝負』が私にとって28歳のこの1年なのだろう。
海外のとある辺鄙な町での道路工事。
日本を離れ、友と離れ、仲間とも離れたこの1年。
こちらで共に働く仲間は出来たがそれに変える事の出来ない胸が締め付けられる虚しさが私にあった。
良い年だというのに目から涙が落ちる。
友や家族の声を聴きたい。
皆とふざけ合って酒を飲み明かしたい。
ネットがつながっていないから電話は出来ないし電気も後の事を考えるとつける気にならない。
ベッドの上で窓の外から見える星を見上げる。
まるで監獄だと思った。
祖父の言っていた『勝負』と言う言葉に手に汗握るような激闘や辛く苦しい修行をイメージしていたが、本当の勝負は『持久走』だった。
辛く苦しいのではなく、『長く、苦しく、終わりが見えない』そんな試練だった。
後何度この日を繰り返せば勝つことが出来るのか…。
流れ星が走った。