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0625 熱熱なシーズン

須田家は高校3年生の双子の兄姉。私。中学三年の妹。中学1年生の弟一人の5人兄姉妹弟(きょうだい)である。


家族仲は皆良好。末の弟もほとんど反抗期を抜けているので皆が皆独立した良い大人。

だがしかし所詮はどこまで言っても『家族』である。


八月某日。


夏休み中、兄姉妹弟(きょうだい)大集合のこの日は猛暑日であった。

皆が皆クーラーの掛かった部屋から出ようとはせず家で惰眠を貪ろうとしていた時兄が『アイスが食べたい』と言い出したのである。


もちろん私だって食べたい。と言うか家族みんなそう思っている事だろう。


兄は一番最初、私にアイスを買ってくるよう言ってきたがもちろんこんな日に外など行きたくはないので断って、妹にお願いしろと言い放った。

次に妹に兄がお願いしようとしたが、言い切る前にそんな事は弟に頼めと言い放つ。

最後に兄が弟の方を見た瞬間自分で買ってこいと突き放した。


だが、ここで大人しく外に出て行く兄でもない。


「須藤家恒例第1万8013回家族内決闘ォー!」


ーーーと言う事で姉も含めた5人でのUNO大会が始まった。



***



UNOは絵札の色か数字が同じカードを一人1枚づつ出していくカードゲームで先に手札が無くなった人が勝ち。と言うルールだ。


1~9までの数字と赤・黄・青・緑の4色の組み合わせの他、様々なイベントカードが入っているのも特徴である。


また我が家では特殊ルールとして手札1枚時の「UNO」の宣言をせずに、同じ数字(種類1枚まで)を重ねて出して上がることもできる。


つまり実質手札が4枚になったら警戒しなければならない。



現状を説明しよう。


序盤から積極的に手札を使って、試合を早く終わらせようとした兄。

しかしその手札に赤のカードが少ない事に気づき兄の前の順番に当たる妹と姉が協力し止めにかかり兄は手札3枚から動けない状態。


妹、姉は交互に話し合いながら色を変えているがあまり手札は減っておらず5枚以上。


兄、姉、妹の三つ巴になっている間に私の手札は後5枚。その内3枚は同じ数字だから後3回ターンが回れば抜けられる計算だが私の思い通りに行くだろうか…。


手札から「赤の6」を捨て残り4枚。


そしてターンが手札9枚の弟に回った。


「ドロー2!」


UNOにおいて最も警戒しなければならないカード『ドロー2』

相手に2枚カードを引かせるあのカードは凶悪なカードだが唯一『カウンター』が可能なカードである。


「私もドロー2」

「青のドロー2」


姉、妹もドロー2が続き兄の番。


だが兄は序盤から手札を使っておりカードを引く他ない。


兄が引くべきカードは6枚。

渋々と言う感じで兄がカードを引く。


「ドロー2」


兄が出したドロー2に私は歓喜した。


「ドロー2!」

「はい、ドロー2」


私が出したドロー2に弟も更にドロー2を重ねる。

大量に手札を増やした兄がドロー2を出す事。最も手札が多い弟がまだドロー2を持っている事も想定済みだ。


後は現在手札が3枚の姉と5枚の妹のどちらかがこの札を引く事になるだろう。

そうすればしばらく皆の手札からドロー2が底を着き、つかの間の平安が訪れる。


「あー…私か」


姉が六枚カードを引いて「黄の2」を出した。


「上がり」


妹が手札をその場にぞんざいに捨てた。


「赤、緑、黄の2」のカード。

驚いたが表情に出す事はせずに手札を確認する。


残っているのは「赤、青、緑の4」と「青の3」の4枚。

一番上のカードが青ではあるが恐らく次の兄手札消費の為に色を変えてくれるはず。


このゲームはビリにならなければ良いのだから先に妹が上がったところで問題ない。


「んじゃ、ほい」


兄が出したのは「緑、黄の2」


色が変わらない為渋々山札からカードを引く。


「あ!リバース」


「黄のリバース」順番を反転するというカードだ。


これでお兄ちゃんの番に戻った。


「お!リバースリバース」


兄が出したのは「赤、青のリバース」

順番の逆の逆だから順番は変わらないがこれで兄の手札は5枚。


上がってしまった妹の番がスキップされ先程大量ドローした姉が複数カードを投げた。

一番上のカードは青。

このままゲームが進めば自分は後二手で終わる。


弟が番をスキップして私は「青の3」を捨てた。

これで次、黄色以外のカードで私の番が来れば勝ちになる。


兄、姉とターンが過ぎ、弟のターン。


「ドロー2」

「嘘ぉ!?」


先程たらふくドロー2をつかったというのにまだ持っていたというのか!?

だが使われてしまったからにはカードを引くしかない。

その上色が黄色なのでそのままターンスキップ。


「よしあがり!」

「!!」


まさか最初から飛ばしまくっていた兄が4枚違う色の同じ数字のカードを揃えているとは予想にしていなかった。


残るは私、姉、弟の三人。


姉がカードを三枚連続で出し、弟もカードを二枚。

一番上のカードは「黄色」


さっきから弟が出してくるカードが黄色ばかり。もしかしたら。いや、恐らく私の手札に黄色が無い事がバレている。


姉が手札を順調に減らし、弟もどんどん手札が減る。


気付けば弟に嵌められ、姉の手札も段々と減っていく。


手に握るカードに力が籠った。

このままだと負けてしまう。


次の番、一番上に来たカードは「青」だったがこのままの流れだと私が手札を使い切る前に二人が勝ち上がってしまう。


今は手札の消費ではなく流れを変える事が必要だ。

ここでカードを引いて流れを断ち切る!


「私のターン、ドロー!」



ーーー

ーーーーーー



弟の見ているカードゲームアニメの主人公達みたいに上手くはいかないらしい。


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