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0703 静かに目を閉じる

名人戦の最終局面。


音は聞こえない、相手が誰かも関係ない。

目の前の盤を目に焼き付けてから静かに目を閉じる。


脳裏に焼き付いた盤の駒を走らせる


不可。


王を取られる流れが見え、盤を元に戻して再び走らせる。


不可。


別の方向から走らせる。


不可。


再度走らせる。


不可。


走らせる。


不可


走る。


不可



不可


h---不可


―――止まりそうになった思考を再起動させた。


再び目を開け状況を見直す。


この盤面確かに見た事がある。

そしてこの盤面から逆転した奴が過去にいた。


誰だ?そしていつだ??


再び目を閉じ考える。


記憶を遡る。


遡る


遡。


あった!


思考を再び走らせ―――あ。


走らせてから思わず口元が笑ってしまった。


後は…見逃しが無い事を天運に任せる他無いだろう。


僕は駒を動かす。


***


そこからはスピーディーに試合が進み、32手の後、名人が投了した。

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