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第2話

そして――システムの言葉は、間違っていなかった。


この世界に転送された直後、

やっとの思いで遠くから神谷慎一の姿を見つけたその瞬間、

彼の背後に控えていた屈強なSPたちに、私はあっさりと気づかれてしまった。


彼は全身黒ずくめで、上着を肩にかけ、ある私立小学校の門前に立っていた。

どうやら、息子の下校を待っていたらしい。


私の存在には、目もくれなかった。

冷たく無表情な横顔を見つめながら、

胸の奥に、なぜだか制御できないほどの悲しみが込み上げてきた。

涙が出そうなくらい、苦しくて、悲しい感情だった。


私はその場で呆然と立ち尽くしていた。

SPたちが接近していることにも気づかないまま。


気がついたときには、私はコンクリートの塀に叩きつけられ、

体のあちこちに激痛が走っていた。

睨みつけるような顔をしたSPが、私に向かってこう言った。


「余計なものを見るな」


冷たく見下ろしたまま吐き捨て、

「次に同じことをしたら、今度はただじゃ済まない」と、凄んだ。


私は地面に這いつくばったまま、その場に取り残された。

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