その時、空から突然、雪が舞い始めた。
傷ついた腕を抱え、私は壁際に身を寄せる。
遠くには、神谷慎一が息子と合流する姿が見えた。
だが――息子を迎えたはずなのに、
彼の表情には一切の笑みがなかった。
手にしていた煙草を無造作に消し、無言で息子の手を取る。
二人はそのまま、車へと歩いていく。
……もしかしたら、私の視線があまりに熱すぎたのかもしれない。
車に乗り込む直前、あの少年がふと振り返り、まっすぐにこちらを見た。
私は血と雪にまみれ、みすぼらしい姿だった。
それでも、無意識のうちにその美しい少年に、優しい微笑みを浮かべていた。
少年の瞳は、父親と同じく、まったく感情を映さなかった。
それでも、じっとこちらを見つめてくる。
ほんの一瞬の視線の交錯。
彼はそれきり、何も言わずに車へ乗り込んだ。
SPが車のドアを開け、
ドアは私の目の前で静かに閉まり、
車は振り返ることなく、走り去っていった。