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第3話

その時、空から突然、雪が舞い始めた。


傷ついた腕を抱え、私は壁際に身を寄せる。

遠くには、神谷慎一が息子と合流する姿が見えた。


だが――息子を迎えたはずなのに、

彼の表情には一切の笑みがなかった。

手にしていた煙草を無造作に消し、無言で息子の手を取る。


二人はそのまま、車へと歩いていく。


……もしかしたら、私の視線があまりに熱すぎたのかもしれない。


車に乗り込む直前、あの少年がふと振り返り、まっすぐにこちらを見た。


私は血と雪にまみれ、みすぼらしい姿だった。

それでも、無意識のうちにその美しい少年に、優しい微笑みを浮かべていた。


少年の瞳は、父親と同じく、まったく感情を映さなかった。

それでも、じっとこちらを見つめてくる。

ほんの一瞬の視線の交錯。

彼はそれきり、何も言わずに車へ乗り込んだ。


SPが車のドアを開け、

ドアは私の目の前で静かに閉まり、

車は振り返ることなく、走り去っていった。

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