心臓が――まるで突然足を踏み外したかのように、ぐっと沈み込んだ。
深い脱力感が波のように押し寄せてくる。
けれど、その奇妙な感情の理由を考える間もなく、目の前に突如として白い文字列が現れた。
その文字は、私の視界いっぱいに広がり、高速で流れていく。
【また新しい攻略者かよ】
【この十年で何十人、いや何百人目かわからん】
【システム、ほんとに悪役さんを恐れてるんだな。あいつが機嫌損ねたら世界が終わるって思ってる】
【だからって、何が何でもあの人の側に人を送り込みたがる】
【でもさ、悪役さんが愛してるのは、亡くなった奥さんだけだよ】
【この十年、システムはありとあらゆる“替え玉”を彼のそばに送り込んできた】
【亡き妻にそっくりな顔の子、性格が似た子、記憶そのものをコピーされた子まで……】