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第6話

私は黙って俯いた。

嘲笑うような弾幕は、もはや気にも留めなかった。


ただ、自分の血まみれの腕を静かに見つめていた。


しかし、誰の予想にも反して――

私が再び、神谷慎一という存在に関わるきっかけとなったのは、

彼の息子のほうから、私を訪ねてきたことだった。


彼がどうやって私を見つけたのかはわからない。

ただ、朝、古びたアパートのドアを開けたとき、

彼が一人でランドセルを背負い、私の部屋の前に立っていた。


父親そっくりの、感情を一切浮かべないその顔に、

私は思わず足を止めた。


少年はわずかに顔を上げると、じっと私を見つめてきた。

そして、低く、無機質な声でこう尋ねた。


「……誰?」


――不思議な子だ。訪ねてきたのは彼のはずなのに、最初の言葉が「誰?」だなんて。


「私は……結城望(ゆうき のぞみ)です」


私は真剣に、彼の問いに答えた。


すると、少年の眉間がきゅっと寄った。

まるで、私の名前に反応するかのように。



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