私に真実を伝え、
おそらく私が抵抗しなかったのを見て、
神谷慎一はさらに遠慮をしなくなった。
彼は車から降りると、そのまま私を抱えたまま、見知らぬ重厚な高層の邸宅の中へと運び込んだ。
玄関を踏み入れると、室内の灯りが自動で点いた。
正面に目に入ったのは、巨大な肖像画だった。
そこに描かれていたのは、若い女性の顔。
神谷慎一は私の視線を追って、
低く言った。「十年は、長すぎた」
「だから、時間潰しにいくつか習い事をしたんだ」
そう言いながら、彼はその絵を指さした。
階上からかすかに聞こえていたピアノの音が、その時止んだ。
誰かがドアを開けて出てきた。
蓮(かみや れん)だ。
彼は父親と瓜二つだった。
家の中でも、きちんとしたシャツとズボンを着ていた。
二階から、私たちを見下ろすように立っていた。