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第34話

夜、私は寝室のベッドの端に座り、蓮の過去の写真をめくっていた。

神谷慎一は彼をとてもよく育てていた。

生まれてから今の十歳まで、毎年記録された写真があった。

神谷慎一がバスルームから出てきた。

さっさと布団をめくって私の隣に座った。


私は足を引っ込めた。

彼はもう私の腰に手を回し、

私を彼の胸の中に抱き寄せた。


「お前がお前だと確信したのは、いつだと思う?」

私は彼の方を向いた。


「先月の23日、夜中の12時、お前が書店の外で犬に餌をやっていた時だ」

神谷慎一は言った。

「車が通り過ぎる時、お前の横顔をちらっと見ただけだった」

「十年も感情が揺さぶられなかったのに、その瞬間、胸の奥で心臓が暴れて、破れそうなほどだった」

神谷慎一は私の手をもみながら言った。

「でも、システムはあの頃も不安定だった。この十年、俺がシステムを苦しめた分、奴も隙あらば俺に罠を仕掛けてきた」

「夢か幻か、それが怖かった」

「だからお前だと気づいても、近づけなかった。近づいたら、お前が消えてしまう気がして」

神谷慎一の腕は長く力強く、私の腰をぐるりと囲んだ。

私は受動的に彼の肩にもたれかかり、横顔を見た。

小声で言った。

「それじゃあ、あの夜、会社の非常階段であなたがいたのは、わざとだったのね」


神谷慎一は少しも否定せず、そうだと認めた。

「お前だとわかっていた。でも、怖かったんだ」


神谷慎一のような男が、怖いと率直に口にする。

「この十年、数えきれないほど長い夜、俺はたくさんの夢を見た。夢の中のお前は本物だった。でも目が覚めると、何もかも消えていた」

「これもまた、甘い夢なんじゃないかと怖かった」

「だから俺はお前を観察し、尾行し、お前に何度も俺の目の前に現れさせた」

「そうしてやっと、手を伸ばしてお前を掴む勇気が出た」


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