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私はいまだに昏睡の中にいた。

時折、熱にうなされて痙攣し、またある時は、手足が氷のように冷たく、次の瞬間には命が尽きそうな気がした。

夢の中で、私は25年間の孤独と無力さを何度もなぞった。

ようやく、少しだけ分かった気がした。どうして両親は私を愛してくれなかったのか。


母は双子を身ごもったせいで、お腹に消えない肉割れの痕が残った。

それが、彼女の生涯にわたる後悔となった。

同じ十月十日を経て生まれたはずなのに、姉は両親に、光り輝く栄光をもたらした。

子役として広告に出演しはじめた姉のおかげで、不調だった父の商売は息を吹き返した。

勉強が得意な姉のおかげで、母はPTAで尊敬される存在になった。

女優としての姉のキャリアが注目を集め、両親はかつて望めなかった階級を手に入れた。

そして今、姉が時川家に嫁ぐ可能性が現実となり、両親のの夢は目前だった。――じゃあ、私は?

私が両親にもたらしたものは、平凡な成績と、写真撮影すら満足に応じない反抗心。

実現できなかったと、未来への野心を持たず、ただ平凡であることへの甘んじ。唯一必死に手を伸ばした一度きりの挑戦すら、姉の将来と縁談を壊しかけただけだった。

私は――

本当に、愛されるに値しなかったのかもしれない。

そして、私が時川徹を必死に追い、狂おしいほどに愛したことも、結局は、自分自身を救いたいだけだった。

あの人が私を救ってくれると、信じていた。

――けれど、彼はその手を、差し伸べなかった。


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