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324 今後の方針を考えよう

 アジトを出た後、フェムは小さな姿に戻った。

 元気に尻尾を振っている。


『もう大丈夫なのだな?』

『恐らくな』


 そして、俺とフェムは姿隠しの魔法を使ったまま、クルスたちのいる小屋に戻る。


『あとつけられてないよな?』

『大丈夫なのだ』


 フェムがそういうのなら安心だ。

 小屋に入ると、クルスとモーフィが出迎えてくれる。


「アルさん。おかえりなさい!」

「もっもー」

「ただいま。襲撃があっただろう?」

「ありましたー。適当に追い返しておきました!」

「もっ!」


 モーフィが堂々としている。きっと活躍したのだろう。

 俺はモーフィを撫でてやる。

 モーフィは俺のお腹辺りに鼻を押し付けてきた。


「シギが気になるのか?」

「もう!」


 シギショアラはずっと大人しい。

 俺の懐の中で、熟睡している。


「いまは寝ているからな。起こさないようにな」

「もぅ」

「クルス、小屋になにか怪しいものあったか?」

「特になかったです」

『なかった』


 モーフィも念話で教えてくれる。

 嗅覚のするどいモーフィがそういうのなら、無いのだろう。


 俺たちが会話している間、トクルは部屋の隅で大人しくしていた。

 酷い落ち込みようである。


「トクル、どうだった?」

「……懲りました」

「それならよかった」


 もう勝手に暴走することはあるまい。

 あとは、父のトリルが教育することだろう。


 俺たちは王都に戻るため、小屋を出る。

 魔法防御をかけて、魔法の鍵もかける。

 解錠するための鍵も作っておく。


 クルスがいるので王都の出入りは楽にできる。

 そのままトルフ商会へと向かった。

 裏口から、商会に入ると、父トリルが走ってくる。


「お疲れ様でございます。どうなりましたか?」

「無事解決しました」


 父トリルは応接室へと通してくれる。お茶とお菓子が出された。

 途端に俺の懐の中にいるシギがもぞもぞし始める。


「りゃあ!」

「シギ、起きたんだな」

「りゃ」


 シギは俺の懐から出て、机の上に乗ると、お菓子を食べ始めた。

 お茶も飲んでいる。

 俺はシギを撫でながら、父トリルに経緯を説明した。


「なんと、かの悪名高いネグリ一家が……」

「一応釘を刺しておきましたので、ちょっかいを出してくることはないと思います」

「なにからなにまで……ありがとうございます」

「もし、何かあれば、些細なことでも言ってください。また釘を刺しに行きます」

「すぐに、ぼくの屋敷に来てね。メイドさんに言えば、ぼくに伝わるようになっているから」

「伯爵閣下も、ありがとうございます」


 その後、少し談笑してから、お暇することにした。

 父トリルは何度目かわからないお礼を言う。


「なんとお礼を言ってよいやら……」

「いえいえ。こちらも助かりました」

「愚息は今回の件に関わらず、罠にかけられていたようですね」

「恐らくは……」

「閣下たちに気付いていただけなければ、手遅れになっていたかもしれません」

 そして父トリルは深々と頭を下げる。


「本当にありがとうございました。愚息は、一から教育する予定です」

「それは良かった」


 子トクルも頭を下げる。

「本当に、ありがとうございました」

 子トクルも反省しているようだった。


「ぼくには商売のことはわかんないけど、頑張ってね!」

 クルスは子トクルを励ましていた。



 そして、俺たちはムルグ村へと戻る。


「おっしゃん! おかえり!」

 村の入り口近くで魔狼たちと遊んでいたコレットが駆け寄ってくる。

 一緒に魔狼も走ってきた。


「ただいま。コレットいい子にしてたか」

「してた!」

 俺はコレットを抱き上げる。


「わふわふ!」

「わう!」

「もっもー」

 フェムとモーフィと魔狼たちが挨拶していた。



 その日、夜ご飯を食べ終わった後、全員で話し合う。

 俺は改めて、経緯を説明した。


「ネグリ一家が噛んでいたのね。一応警戒はしておくわね」

「私も、ネグリ一家が何かやらかさないか、気を付けておくのだわ」

 ルカとユリーナも注意してくれるらしい。


「で、次はその幹部とやらに会いに行くのであろう? 我が送ろうか?」

 ティミショアラがそんなことを言ってくれる。


「それは助かる」

「任せておくがよい!」

「リンドバルの森から、旧魔王領の町に向かうのが近いかしら?」

 ルカが地図を広げながら言った。


「旧魔王領に行くの久しぶりだから楽しみです!」

「クルスはお留守番なのだわ」

「えっ? なんで?」

 クルスがショックを受けている。


「前も言ったと思うけど、勇者クルスが旧魔王領に行くってこと自体政治的なの」

「えー。そんなー」


 旧魔王領に勇者が行くということは、魔族にとっては圧力になる。

 そして魔族以外は、勇者が出張らないといけない重大事が起こったと怯えるだろう。

 どちらにしろ、避けたい事態だ。


「今回はアルに任せるのだわ」

「むむー。アルさん。お願いしますね」

「任せろ。俺と、ティミと……あと誰がいく?」

「わらわが行くのじゃ!」


 ヴィヴィが高らかに宣言した。

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