次の日の朝食時、俺はクルスたちに向けて言う。
「エルケーに孤児はあとどのくらいいるんだ?」
「うーん。わからないです」
「沢山はいないはずだけど……」
クルスとルカは真面目な顔でそう言った。
ユリーナも真剣な表情になる。
「普通は教会で保護するものなのだわ。でも……」
エルケーにおいては教会はほぼ機能していない。
司祭が一人いるだけだ。信者はほぼ皆無。金銭的な余裕も当然ない。
教会を頼るわけにはいかないだろう。
俺は、朝ごはんをパクパク食べていたタントに尋ねる。
「タント。エルケーに家のない子供っていたかな?」
「ふぉ、ふぉれふぃふぁい……」
タントは慌てて答えようとする。
「急に話しかけてすまん。飲みこんでからでいいぞ」
「ふぁい」
そんなタントを心配したのだろう。
シギショアラがテーブルの上を走って、コップを持っていく。
「りゃあ?」
「シギちゃん、ありがと」
「りゃあ」
それを見て、ティミショアラは涙を浮かべる。
「シギショアラ、すごく立派になって……。アルラ。みたか?」
「ああ、そうだな」
ティミはものすごく感動しているようだ。気持ちはわかる。
シギが優しい子に育ってくれていて、俺もとても嬉しい。
口の中のものを飲み込んだタントが言う。
「五人ぐらいいるよ」
「そうなのか。そいつらはどうやって暮らしているんだ?」
「おれと違って、嫌がらせされてないから……」
「嫌がらせされてないから、空き家に入れるのか」
「そうなんだ」
御用商人に嫌がらせをされていたタントは家に入ったら燃やされたりしたそうだ。
だが、そういう特殊な事情でもないなら、空き家に入ることはできるだろう。
エルケーには管理されていない空き家がたくさんあるのだ。
「食事とかは?」
「街の人たちがこっそりあげていたみたいだよ」
タントも嫌がらせされる前は街の人からご飯などをもらっていたと言っていた。
エルケーの住人は基本的に面倒見がいいのかもしれない。
「とりあえず、孤児にはちゃんとした家を与えて保護しよう」
「そうね、それがいいわ。冒険者ギルドとしても協力するわね」
「教会としても協力するのだわ」
冒険者ギルドと教会の協力が得られたら心強い。
資金はこちらが出すとしても、住民登録や市民権などの手続き上ですごく助かる。
話を聞いていたヴァリミエが言う。
「協力できることがあれば、言って欲しいのじゃ。住居でも食事でも、何でも言うのじゃぞ。なんだったらリンドヴァルの森で引き取っても良いのじゃ」
ティミショアラも言う。
「シギショアラの宮殿に引き取ることは出来ぬが、金や食料なら我も提供できるのである」
「ヴァリミエも、ティミもありがとう。だが、とりあえずは大丈夫だ」
二人の協力が得られるのはとても心強い。
朝食後、俺とクルス、ルカ、ユリーナ、ヴィヴィ、タントはエルケーへ向かった。
フェムとモーフィ、シギも一緒だ。
トムの宿屋では、トム、ケィ、ミリアにレオ、レア、ステフが待っていた。
みんなに事情を説明するとミリアは力強くうなずいた。
「わかりました。私も商人さんに孤児の情報をお聞きしておきますね」
「頼む」
「お任せください! 冒険者に聞けば何か知ってるかもしれません」
レアもそう言ってくれる。
エルケーでずっと活動しているFランク冒険者たちなら何か知っているかもしれない。
「俺たちと同じ親のいない子供かー。同じ場所にはいないことが多いかも。でも、大体あの辺りにいることが多いかな」
「詳しく教えてくれ」
トムが教えてくれた場所は、エルケーの中でも治安のあまりよくない辺りだった。
具体的にはダミアンのアジトの近所だ。
「ダミアン、そういえば、最近会ってないな」
「そうね、噂も聞かないし」
俺の言葉にルカが同意する。
ダミアンとは犯罪組織ネグリ一家の幹部だ。
トムに借金をかぶせて宿屋を乗っ取ろうとしていた。
ほかにも、自称魔王の手先として、精霊石を手に入れようともしていた。
かなりの悪党である。
「噂を聞かないってことは、大人しくているはずなのだわ」
「良いことじゃ」
ユリーナとヴィヴィがうんうんとうなずく。
そんなことを話している間。
「りゃあ」
「シギちゃん、すごいねー」
「シギちゃん、シギちゃん、これを乗っけてもかっこいいかも」
「りゃっりゃ!」
シギとケィとタントが積み木で遊んでいた。シギが一生懸命塔を作っている。
この積み木はこの前、クルスがあげたらしい。
一番年下のシギを、タントとケィが遊んでやっているといった感じだ。
その後、ルカとレアとレオは冒険者ギルドに向かった。
レアとレオはエルケーの主力冒険者だ。色々仕事があるのだろう。
ルカも色々忙しいに違いない。孤児保護への支援の手続きも必要だろう。
ユリーナも教会に向かった。孤児の保護は教会の基本活動の範疇だ。
そして、ミリアとステフは店舗を構えるため物件を探しに行った。
「店舗はしっかり構えたほうがいいですからね!」
ステフはミリアを守る護衛である。
店舗購入のために大金を持っていくので念のためだ。ステフが一緒なら安心だ。
「アルさん、孤児の皆さんのこと、お願いしますね。新店舗で寝泊まりしてもらっても大丈夫ですから!」
「それは助かる」
ミリアとステフが出発した後、俺たちは治安の悪いエリアに向けて出発した。