エルケーが落ち着いたので、俺はムルグ村の衛兵として過ごすようになった。
とはいえ、エルケーも心配だ。
トムとケィ、それに孤児たちの様子も見なければならない。
トムの宿屋に常駐しているステフの魔法訓練も指導しなければならない。
それに、牢屋の中の御用商人たちの様子も確認したい。
俺は何か問題が起こらないか毎日エルケーに様子を見に行ったが杞憂だった。
御用商人一派は全員大人しかったし、孤児のみんなも真面目に頑張っていた。
ミリアの購入した新店舗は、トムの宿屋のすぐ隣にあった。
ミリアは商品をどんどん運び、順調に儲けを出していったのだった。
タントも元気になった。
今ではトムの宿屋で暮らし、孤児たちのリーダーとしてミリアの手伝いをしていた。
御用商人を捕まえてから二週間後。
朝ごはんを食べているとき、エルフの幼女コレットが言う。
「おっしゃん、おっしゃん!」
「ん? どうした?」
「コレットもエルケー行ってみたい!」
「いいぞ。来てみるか?」
「やったー。おっしゃんだいすき!」
コレットの姉ミレットが心配そうに言う。
「いいんですか?」
「いまはもうエルケーも平和だからな。ミレットも来るか?」
「はい、行きたいです。ステフさんやタントちゃんにも会いたいですし」
「じゃあ、みんなで行くのじゃ!」
ヴィヴィもうんうんとうなずく。
最近のヴィヴィは朝から夕方ごろまで、エルケーにいることが多い。
忙しいユリーナにミリアのことを頼まれたからだ。
「あ、今日はぼくも行くよー。タントたちにもあいたいし。今日は領主の館に行かなくても大丈夫なんだ—」
クルスのエルケー行きも久しぶりだ。伯爵領のことで色々忙しかったからだ。
「領主も大変みたいね」
一方、ルカはエルケーの冒険者ギルドに通い詰めている。
冒険者ギルドの仕事で忙しいようだ。
「私も行きたいけど、今日は王都のほうでお仕事があるのだわ」
ユリーナはいつも忙しい。
話を聞いていたティミショアラが言う。
「せっかくだ。我も行くのだ」
「りゃっりゃ!」
シギショアラが嬉しそうに鳴いた。
朝ごはんを食べた後、
「気を付けるのじゃぞー」
「ミリアによろしくなのだわ。困ったことがあったら何でも言うように伝えて欲しいのだわ」
ヴァリミエとユリーナに見送られて、俺たちはエルケーに出発した。
「ぴぎっ」
さりげなく、チェルノボクがフェムの背中に乗っていた。
「チェルも来てくれるのか」
『きょうはおやすみー』
チェルノ村での業務にも休みがあるらしい。
そもそも、チェルノボクは一体どんな業務をしているのだろうか。
一度、チェルノ村に行って見てみたいと思う。
俺たちがトムの宿屋に到着すると、ケィや孤児の幼少組が走ってきた。
「おっしゃん! おかえり!」「おっしゃんおっしゃん!」
子供たちがぴょんぴょん飛びついてくる。
「ただいま。みんなはいつも元気だな」
「そだよー。今日はお客さんいっぱいだね!」
「おお、ほんとだ!」
トムも気付いて驚いていた。
大勢いるがトムの宿屋にはじめて来たのはミレットとコレットだけだ。
そして、トムとケィ以外みんなムルグ村に来たことがある。
だから、今回初対面なのはミレット、コレットとトム、ケィだけだ。
「おねえちゃんはミレットっていうの。よろしくね」
「あなたが、ケィちゃん? あたしはムルグ村のコレットです!」
「ケィだよー!」
「トムです。よろしくお願いします」
自己紹介が終わると、コレットがみんなに呼びかける。
「ケィちゃん、一緒にあそぼう! みんなもあそぼう!」
「うん!」
子供たちが駆けだすと、シギが俺の懐から顔だけ出す。
「りゃ!」
「シギちゃんも一緒にあそぼう!」
「りゃっりゃ!」
シギはパタパタ飛んでコレットの頭の上に乗る。
そして子供たちはシギと一緒に遊び始めた。
それを見ながら、ミレットが言う。
「トムさん、これお土産です」
「えっ! 貰ってもいいのかい?」
「もちろんです」
ミレットが差し出したのは、今朝作ってきた焼き菓子的なものだ。
「ケィ、ミレット姉ちゃんからお菓子をもらったぞ」
「ミレットねえちゃん、ありがとう!」
ケィは頭をぺこりと下げる。
それからトムはミリア、レア、レオも呼んでくる。
「お菓子をもらったんだ、みんなで食べよう! そうだお茶を入れるぞ!」
「ありがとうございます」
みんな嬉しそうに食堂のテーブルに着いた。俺たちも一緒に座る。
遊んでいた幼少組も行儀よく椅子に座る。
トムの宿屋の食堂は結構広く、大き目のテーブルがいくつかある。
沢山人数がいても、全員が座ることが出来るのだ。
トムがお茶を入れてくれたので、みんなでミレットの作ったお菓子を食べる。
「おいしい!」
「ほんとだ、すごくおいしい!」
トムとケィが感動している。
ミレットのお菓子はとても美味しいのでトムたちの反応はよくわかる。
「えへへ、おねえちゃんはお菓子作るの上手なんだよー」
コレットはすごく自慢げだ。
「シギちゃんもおやつたべようねー」
「シギちゃんはいいこだねー」
「シギさん、これもたべる?」
「りゃあ」
シギは子供たちに面倒を見てもらっているようだ。
なぜかタントはシギのことをシギさんと呼んでいる。
保護されたばかりのころ、慰められて一目置いたのかもしれない。
チェルノボクは俺のひざの上に座っている。
フェムとモーフィは俺を挟んで、両隣にお座りしていた。
「りゃむりゃむ」
子供たちは交互にシギにお菓子を食べさせている。
シギは体が小さいのに、パクパク食べる。
お菓子を沢山食べても、お昼ご飯はしっかり食べるのですごい。
ヴィヴィは自分もお菓子を食べながら、モーフィにもお菓子を上げている。
「ミレットのお菓子は美味しいのじゃ」
「もにゅっもにゅ!」
「ありがとうございます」
「本当に美味しい。ミレットいつもありがとう」
「そんな、アルさん、照れてしまいます」
みんなに褒められて、ミレットは頬を赤らめていた。
俺はフェムとチェルノボクにもお菓子をあげる。
『うまいのだ』
「ぴぎっ!」
獣たちも喜んでいるようだった。