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374 孤児の保護に向かおう

 俺たちが次に向かったのは、孤児たちが寝床にしているという空き家だ。

 空き家を眺めながらクルスが言う。


「思ったより古くてボロボロですねー。他にもっとましな空き家もあるのに」

「目立たないように気を使っているんだろうさ」

「子供はそんな気を使わなくていいのに……」


 空き家でも、立派な空き家は管理されているのだろう。

 勝手に入り込めば、追い出されてしまうに違いない。

 もしかしたら、既に追い出された結果、このボロ家に来た可能性もある。


「フェム、中にいそうかな?」

『空き家の中から音がするから、きっといるのだ』

「そうか、ありがとう。モーフィ、クルス。裏口に回ってくれ。逃げられたら面倒だ」

「了解です!」

「もっも!」


 クルスを乗せたまま、モーフィは裏に向けて走っていった。

 それから俺は空き家に正面から近づく。

 フェムも威圧しないように尻尾を振りながらついてくる。


「こんにちはー。誰かいるかい?」

 なるべく明るい声で呼びかけた。同時に俺は聴覚強化の魔法を使う。

 中から声が聞こえてくる。


「だ、誰か来たよ。誰かな?」

「この家に入りこんでるの怒られるのかな?」

「捕まらないうちにこっそり裏から逃げようよ」

「だめだよ。謝らないとだめだよ」


 そして、そおっと扉が開いた。ぼろぼろの服を着た子供がこちらをうかがう。

 トムぐらいの年齢に見える子供だ。

 俺は威圧感を与えないように微笑んだ。それでも子供は謝ってくる。


「あの、ごめんなさい」

「いやいや、怒っているわけじゃないんだ。俺たちは狼商会っていうんだけど」

「狼商会?」


 出てきたトムと同じ年ぐらい、つまり十歳くらいの子供が一番年長なのだろう。

 その後ろには、四歳から六歳ぐらいの子供たちがいた。


 先頭の子供の後ろから、六歳ぐらいの子供が顔を出す。

「あ、ぼく知ってる。狼を連れた獅子の人のお店でしょ?」

 警戒心のかけらもないいい笑顔だった。


「そのとおり。その狼商会だよ」


 俺は微笑んで丁寧に対応する。

 だが、年長の子供は顔を出した子供を自分の背に隠すようにする。

 そして、俺を疑念のこもった目で睨むようにみつめてきた。


「あの狼商会が、ぼくたちになんの用ですか?」

「少しお手伝いを頼みたいことがあるんだ」

「お手伝い?」

「えっとな……」


 俺は簡単にお手伝い内容を説明する。ミリアの新店舗やそのほかの簡単な雑用などだ。

 お手伝いをしてもらわなくてもいいのだが、そう言っても信用しないだろう。

 だから、あえて仕事を与えることにした。


「ちゃんとご飯や、泊まる場所も用意してある」

「それはありがたいけど……」

「なにか問題があるのか?」

「おれはお手伝いできるけど、こいつらはまだちびだから……」

「あーなるほど」


 幼少組が労働力としてあまり役立てないことを心配しているのだ。


「おれがこいつらの分も働くからさ、なんとか一緒にお願いできないかな?」

「もちろん、最初からそのつもりだ」


 俺がそういうと年長の子供は顔を輝かせた。


「じゃあ、おれたちはおじさんについて行く!」

「それは助かる」


 話し合いで解決できてよかった。

 クルスに逃げられないよう裏口に移動してもらっていたが、必要なかった。


「フェム」

「わふ」


 フェムがクルスを呼びに走る。

 それを見て子供たちは「おっきいいぬ!」と嬉しそうに言っていた。


 すぐにフェムはクルスとモーフィを連れて戻ってくる。


「みんな、こんにちはー。狼商会の獅子仮面だよー」

「もっも!」

「わー。獅子仮面だー」「すげー」「うしさんだー」

「もうもう!」


 たちまちクルスとモーフィは子供たちに囲まれる。

 モーフィも子供たちに体を撫でられて、ご機嫌に鳴いていた。

 やはり獅子仮面は子供たちに大人気らしい。


 一方、フェムは子供たちに集まってもらえなかったせいか、少し寂しそうにしていた。

 だから、代わりに俺がいっぱい撫でてやった。


 それから、子供たちを連れてトムの宿屋へと向かう。

 幼少組は楽しそうにモーフィの背に乗っていた。


 道中、俺は年長の子供に言う。


「一度ムルグ村に来てもらって、服を着替えてもらおう」

「着替えるって言っても、おれたち服なんて持ってないぞ」

「服ぐらい余っているのがあるから安心しろ」


 トムの宿屋に行って、孤児たち五人とタントを一緒にムルグ村へと連れていく。

 ヴィヴィやユリーナ、ルカとクルスに協力してもらい、全員をお風呂に入れる。

 どぶくさい臭いをとって、いい匂いにさせてから、きちんとした服を着せていく。


 そのころにはミリアが戻ってきた。ミリアは孤児たちに言う。


「みなさんにはお仕事を手伝ってもらいますよー」

「がんばります!」

「いいお返事ですね! 難しくはないので大丈夫です、安心してください」


 それから三日ほど、孤児たちにはトムの宿屋で過ごしてもらった。

 その間、ステフが子供たちに文字の読み書きや簡単な計算を教えてくれた。

 一方、ヴィヴィはミリアの購入した新店舗に魔法陣を描きまくっていた。

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