俺はエクスに笑顔で返答する。
「よくわかったな」
「やはり」
「な、なんですって。アルラさまが魔王などと……」
ベルダは初めて知った事実に驚愕している。
「先ほども言ったが、魔王といっても魔族の王という意味ではない」
「そうよ、魔神の加護を受けた者ぐらいの意味なの。あまり深刻にとらえない方がいいわ」
ルカも弁護してくれる。
「そう、だったのですね」
それでもベルダは驚いた表情を浮かべたままだった。
そんなベルダにティミが、優しく説明する。
「王、つまり神の使徒というのはだな——」
その説明を聞いて、クルスは真面目な顔でうなずいた。
「そうだったんだ……」
「クルスは知ってるはずだろう?」
「えへへ」
ティミの説明はわかりやすかった。
今まで理解していなかったクルスも理解できるぐらいわかりやすい説明だったのだ。
ベルダも理解できたようだった。
説明を終えたティミがエクスに尋ねる。
「ところで、破壊神の力って言うのはどのような物なのだ?」
「その名の通りです。破壊することができます」
「ふむ。単純な権能だな。そして、だからこそ強いとも言える」
「ありがとうございます」
ティミはエクスの破壊神の権能に興味津々なようで、いろいろ尋ねはじめた。
それをユリーナが遮る。
「権能にも興味はあるけど、先に破壊神の神託について聞きたいのだわ」
「たしかにそうであった。すまぬ。エクス、神託について教えてほしいのである」
「そうね。ただ集まるってだけ教えてくれたわけではないんでしょう?」
ルカにそう言われて、エクスはうなずく。
「その通りです。神の使徒は力を合わせて迷宮の奥に居るものを倒してほしい、と」
それを聞いて俺は迷宮とはエルケーにあるダンジョンのことではないかと思った。
不死者の王はダンジョンには強力な不死者が封じられていると言っていた。
その不死者を倒してほしいと、破壊神は言っているのだろうか。
恐らく皆もそう思っているだろう。だが、俺はあえてエクスに尋ねる。
「迷宮とはどこの迷宮だ? そして奥に居る者とはなんだ?」
「それはわかりません。破壊神はそこまでは教えてくれませんでした」
教えなくてもわかるだろうと言うことだろうか。
実際、俺たちは正しいかは置いておいて、何のことか推測はできている。
真剣な表情で聞いていたクルスが言う。
「普通に考えたら、迷宮はエルケーのダンジョンのことかな?」
「で、倒してほしいのはすごい力を持つという不死者と考えるのが自然よね」
「クルスとルカの言うとおりだな。エクス。実はだな」
俺はエクスにエルケーの地下にあるダンジョンのことを説明する。
不死者の王との戦いと、聞いた情報も伝えておく。
「今日はダンジョン潜る予定だったのだが、竜大公たちがやってきて流れてしまったんだ」
「そのようなことが……」
俺の説明を聞いてエクスは神妙な表情で頷いていた。
クルスがそんなエクスに言う。
「エクスも一緒にダンジョンに潜ろう!」
「もちろんそのつもりです」
「じゃあ、エクス、今から行こう!」
そう言ったクルスは目を輝かせていた。冗談ではなく完全に本気のようだ。
だから俺はクルスをたしなめる。
「クルス待つんだ。エクスは到着したばかり。それにルカとも試合をしたから疲れている」
「そうよ。それにダンジョン探索の準備も必要よ。私もエクスとして少し疲れたし」
「またまた、旅してきたエクスはともかくルカは疲れてないでしょ?」
「そんなことないわ。本気で戦ったから」
「そっかー」
「……ありがとうございます」
エクスは本気で戦ったと言ってもらえて照れたのか、嬉しそうに頬を赤らめていた。
そのとき、それまでおとなしく話を聞いていたユリーナが言う。
「……ところで破壊神を信用してよいのかしら。侯爵閣下は信用しているようだけど」
ユリーナが警戒するのもわかる。
それは破壊神が邪神と呼ばれているという理由だけで警戒しているのではない。
不死者の王はダンジョンの奥に行き、強大な不死者とやらの封印を解こうとしていた。
そして破壊神の神託通り、俺たちが強大な不死者を倒そうとするならば封印を解かねばならない。
「でもさ、ユリーナ。神託を知る前から僕たちは封印をこじ開けて倒すつもりだったわけだし」
「……それは、クルスの言うとおりなのだけど。侯爵閣下は破壊神についてどのように思われておられますか?」
エクスは侯爵なので、ユリーナは敬語を崩さない。
「あの、公式な場ではないので、どうか敬語はなしでお願いします」
「ですが……」
「エクスがこう言っておるのだ。私からも頼む」
「わかったのだわ」
ベルダからも頼まれて、ユリーナも敬語をつかわないことにしたようだ。
その後、エクスは改めて破壊神について自分の思うことを語り始めた。