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第72話

 そんな二人を見てシャーリーンは目を丸くしていたが、シャーリーは嬉しそうに手を叩いて喜んでいる。


「そんな訳だ、レイリー。お前達の処分は追って報せる。それからシャーロットは処刑されたとモリスに手紙を書いてくれ」

「わ、分かりました」


 何が何だかよく分からないというような顔をしながらも、レイリーは頷いてその場で手紙を書き始めた。それを受け取ったギルバートは、廊下で控えていたリドルに渡して言う。


「モリスと近々戦争になる。詳しくはサイラスに話しておく。それからこれをあの鳥に持たせてくれ。【ヒヨコマメはすっかり僕に懐いているからな。多分すぐに飛んでくれるぞ。】ついでに【ヒヨコマメで思い出したが、】ロタに【飴の補充をして一言言ってやらないとな。あいつ飴をすぐにかみ砕くんだ。あの飴は】国境付近に【しか売っていないというのに! 全く。自分で】向かえ【ないのだから少しは遠慮をしろ】と!」

「畏まりました。すぐに手配します」

「ああ、頼んだ。モンクも戻っていい。シャーリーンは大丈夫そうだ」

「はい。ではこれで失礼します」


 続いてギルバートはサイラスを呼んで作戦のあらましを伝えた。


「畏まりました。すぐにガルドに伝えます。今から出発しますか?」

「ああ。【いつも悪いな、サイラス。たまには良いニュースをお前に伝えたいものだが、また戦争になりそうなんだ……こんな事が無ければさっさとシャーリーと婚約して結婚でもしたかったが、どうやらそうはいかななさそうだ……はぁぁシャーリーと結婚か……結婚式の】馬車は六頭立てだ。【いや、待てよ。馬車には乗らずに一頭に二人で乗るのもなかなか……】」

「畏まりました! すぐに用意します!」

「ああ、頼む」


 今日も元気なサイラスの返事に現実に戻されたギルバートは、ハッとして頷いた。そうだった。まだ何も終わっていなかったのだ。うっかり妄想に溺れそうになるギルバートを現実に引き戻してくれたサイラスに礼を言いながらギルバートが部屋に戻ると、待ってましたとばかりにシャーロットが寄って来た。


「それで、いつアルバに向かうの?」

「すぐにだ。用意しておいてくれ。明日の朝にはアルバに到着する予定で馬車を走らせる」

「分かったわ。とは言っても特に何もないのだけれど」

「姉さまだけ行くんですか? 私は?」

「シャーリー、君にもついて来て欲しい。シャーロットが王位についたら、すぐに君達の事を公表する。幸いな事に悪役令嬢シャーロットと言う名はアルバではどうやらただのあだ名のようだ。双子なのを黙っていたのも、モリスに乗っ取られそうになっていたのを、二人でシャーロットを演じて食い止めていたと説明してくれ」

「……それだけでいいの?」

「それだけでいい。アルバの民たちはシャーロット姫を取り返そうと躍起になっている。それこそがモリスの狙いだ。それを未然に防ぐには、それが一番効果的なんだ」


 ギルバートが言うと、シャーリーは真剣な顔をして頷いた。やはりシャーリーは真剣な顔をしても可愛い。可愛いがすぎる。


「ちょっと、見惚れてないで用意するわよ」


 そんなギルバートの視線に気付いたのか、呆れたような顔をしてシャーロットが言う。双子だと言うのに、こちらは本当に可愛くない!


「僕も用意をしてくる。先に馬車に向かってくれ」


 ギルバートはそう言って部屋を出ると父に報告に向かう。


「失礼します。双子の母親、シャーリーンが目を覚ましました。それに伴って一部作戦の変更を伝えに来ました。今から双子を連れてアルバに行ってきます。そこでアルバ王を退陣に追いやってそのままシャーロットを王に置きます」


 ギルバートがそこまで言うと、父はコクリと頷いた。全てを語らずとも、ギルバートの言いたい事が分かったのだろう。流石父である。

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