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死んだら、異世界でレベル1から怪物狩り
死んだら、異世界でレベル1から怪物狩り
ゆうき かえで
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年06月07日
公開日
1.1万字
連載中
普通の高校生・結城ハルは、ある日交通事故に巻き込まれて命を落とす。 だが、目を覚ました場所は、剣と牙と血が支配する異世界だった。 剣の持ち方すら知らないまま、目の前に現れたのは凶暴な魔獣・コボルド。 生きるため、死なないため—— 彼は本能のままに戦い、そして“進化する力”を手に入れる。 スキルを獲得し、レベルを上げ、怪物を狩って喰らい、さらに強くなる。 「殺さなきゃ、生き残れない。だったら俺が、全部ぶっ殺す。」 仲間も、武器も、師匠もいない。 ただ己の腕と、這い上がる意思だけを信じて。 最弱の転生者が“狩人”として生き残る、超硬派・血煙サバイバル冒険譚、開幕!

第1話目を覚ましたら、手には骨ナイフ、足元には魔物の死体

 ——その日、俺は死んだ。


 信号が青になった瞬間、道路に飛び出してきた小さな女の子。

 対向車線から猛スピードで突っ込んでくる軽トラ。

 気づいた時には、俺の体は無意識に彼女を突き飛ばしていた。


 刹那、金属がぶつかる音。世界がスローモーションになる。

 胸が潰れるような衝撃。視界がぐるぐると回って、空が遠ざかっていく。


 ——終わった、と思った。


 でも次に目を開けた時、そこは見知らぬ世界だった。



「っ……!?」


 息が詰まりそうなほどの臭い——血と獣の腐臭、そして湿った土の香りが鼻腔を襲う。


 目を開けると、俺は土の上に倒れていた。背中は湿っていて、頬には泥がついている。


 全身がズキズキと痛み、喉はカラカラ。だが、一番の異常は——


 右手に握られた、骨でできたナイフだった。


 そして、俺の足元には。


「……なんだ、こいつ……」


 人間大の生物が、うつ伏せに倒れていた。頭は犬、皮膚は黒く、筋肉が異様に盛り上がっている。

 まるで、ファンタジーRPGに出てくるような魔物。


 そいつの喉には、俺の持っている骨ナイフが深々と突き刺さっていた。


 俺が殺した……?


 記憶がない。だが、ナイフを引き抜いた時、手に感じた血の温度だけは、現実だった。


 ——その時だった。


 脳内に、冷たい機械音のような声が響く。


【システム起動中……】

【異界環境への適応、完了】

【モンスター進化システム、アクティベート】

【現在レベル:1】

【ステータス:人間(脆弱)】

【任務:低級魔物コボルドの討伐】

【初回報酬:感覚強化or筋力強化or自己回復スキルのいずれか】


「……まじかよ。」


 状況が呑み込めない。


 だが、俺は死んだはずだ。そして、今ここで生きている。

 骨ナイフを持ち、魔物の死体の上に座り込み、異世界っぽいシステムに案内されている。


 なら、これはそういうことなんだろう。


 俺は今、異世界にいる。


 言葉にすると、心臓がドクンと跳ねた。


 そして、その直後——


 背後の茂みから、何かが音を立てて現れた。


 ガサ、ガサガサッ。


「……!」


 反射的に振り向く。そこにいたのは、もう一体の《コボルド》だった。

 今度は生きていて、金属バットのようなものを手にしている。


 俺を見つけると、涎を垂らしながらギラギラした目で睨んできた。


 戦闘本能が叫ぶ。


 逃げる?無理だ。足元は不安定、方向もわからない。

 なら——


 やるしかない。


 俺は骨ナイフを構え、叫びながらコボルドへ突っ込んだ。


「うおおおあああああああああっ!!」


 コボルドの棍棒が横から振り下ろされる。

 ギリギリでかがみこみ、俺はその脇腹を斬りつけた。


 ——ガリッ!


 浅い。刃が弾かれる。コボルドが怒り狂って反撃してくる。

 右肩を強打され、視界がぶれる。骨ナイフが吹き飛ぶ——


 だが、地面に転がったナイフを即座に拾い、俺は渾身の力でコボルドの喉に突き立てた。


「っっ……死ねえええええええ!!」


 ゴブ、という音とともに、コボルドの体が崩れ落ちた。


 呼吸が荒い。肩が痺れる。

 でも——生きてる。


【《コボルド》を撃破】

【経験値+100】

【レベルアップ:Lv.2】

【進化スキル選択可能】


1. 感覚強化(危険察知+視界広がる)

2. 筋力強化(打撃力アップ)

3. 自己治癒(軽度傷の自然回復)


「三番だ……生き残るには、回復が必要だ。」


【《自己治癒》スキルを習得しました】

【現在のダメージ:軽度打撲→回復中】


 俺の肩にじんわりと温かさが広がる。


 まるで体の中で“修復”が始まったような感覚。

 現実なら絶対あり得ない。でも、今の俺は、それを受け入れていた。


 だって——


 これが、新しい俺の世界なんだから。


 血にまみれた骨ナイフを拾い、コボルドの耳を切り落とす。

 あとで素材として役立つかもしれない。


 そうやって俺は、死体の中から立ち上がった。


 まだこの森の奥には、無数の魔物が潜んでいるのだろう。

 でも俺には、骨ナイフとこのシステムがある。


 死んでたまるか。

 せっかくもらった“二度目の人生”だ。


 俺は静かに、しかしはっきりと呟いた。


「よし、次の獲物を狩りに行くか。」


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