「んで、わざわざ返事を待ってると」
「仕方なくね。急かさないでくれと言われたから……」
涼介がお茶を飲みながら、こんなことを言い出した。
「今日が約束の日じゃないですか?」
「今日返事がなかったら、潔く諦めるしかないわね」
雅哉さんが部室に来ない。つまり私に興味がなかったということ。薄々分かっていたの。
あれだけアピールしたのに、手を出されなかった時点で、私の恋は終わっていたことを。
「ごめん遅くなったっす!」
ドンっと部室の扉が開いた。その扉の向こうには、息を荒げた雅哉さん本人の姿が存在していた。
「第五回、萩原雅哉を詰める会に参加してて遅くなったっす。それで改めて、返事を返すっす。僕の恋人になってくださいっす!」
その言葉は、私が諦めていたはずの、手が伸びるほど欲しかった言葉だった。
「あの日以降、僕は目一杯考えたっす。彼女が一種の気の迷いに陥ってるのか、それとも本気で好いてくれているのか。その結論が出せないまま今日を迎えたんすけど、ちょうど『第五回、萩原雅哉を詰める会』で女子達の意見を聞くことができて、それで決心したんす」
「雅哉お前、気づくの遅いですよ!」
「雅哉さん……いいの。私を恋人にしてくれてありがとう!」
すると、雅哉さんの背後に女幽霊が現れた。その女幽霊は控えめな笑みを浮かべた後、消えていった。