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第5話 んで、わざわざ返事を待ってると

「んで、わざわざ返事を待ってると」


「仕方なくね。急かさないでくれと言われたから……」


 涼介がお茶を飲みながら、こんなことを言い出した。


「今日が約束の日じゃないですか?」


「今日返事がなかったら、潔く諦めるしかないわね」


 雅哉さんが部室に来ない。つまり私に興味がなかったということ。薄々分かっていたの。


 あれだけアピールしたのに、手を出されなかった時点で、私の恋は終わっていたことを。


「ごめん遅くなったっす!」


 ドンっと部室の扉が開いた。その扉の向こうには、息を荒げた雅哉さん本人の姿が存在していた。


「第五回、萩原雅哉を詰める会に参加してて遅くなったっす。それで改めて、返事を返すっす。僕の恋人になってくださいっす!」


 その言葉は、私が諦めていたはずの、手が伸びるほど欲しかった言葉だった。


「あの日以降、僕は目一杯考えたっす。彼女が一種の気の迷いに陥ってるのか、それとも本気で好いてくれているのか。その結論が出せないまま今日を迎えたんすけど、ちょうど『第五回、萩原雅哉を詰める会』で女子達の意見を聞くことができて、それで決心したんす」


「雅哉お前、気づくの遅いですよ!」


「雅哉さん……いいの。私を恋人にしてくれてありがとう!」


 すると、雅哉さんの背後に女幽霊が現れた。その女幽霊は控えめな笑みを浮かべた後、消えていった。

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