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第4話 犬の幽霊

「無事に合流できてよかったっす。そっちは幽霊退治捗ったっすか?」


「ええ……そうね」


 先程まで幽霊に恋愛相談をしていたなんて、とてもじゃないが言えない。


 私たちは二階から三階へきていた。


「ワン、ワン!」


 三階に来て早々、犬の遠吠えが聞こえてくる。それと同時に、雅哉さんの表情が曇った。


「気をつけるっすよ水島さん。あの鳴き声は犬の幽霊『くっつけワンワン』っす!」


「くっつけワンワン? なにそれ?」


「くっつけワンワンとは、超低確率な割合で現れる厄介な幽霊なんす。もしくっつけワンワンと男女が遭遇すれば……」


「すれば……?」


「男女のテンションがおかしくなり、例外なく行為をおっ始めるという、恐ろしい幽霊なんすよ!」


 あれ、これ私にとっては願ったり叶ったりな幽霊なんですけど……


 まさか、あの女幽霊さんが呼び出してくれたのだろうか? 本当に私の味方をしてくれた!


 正体が分かれば怖くはない。私は雅哉さんの手を恋人繋ぎで握った。


「行きましょう! くっつけワンワンの元へ!」


 雅哉さんはキョトンとしていたが、すぐに正気に戻って恋人繋ぎを解こうとしてきた。


「火事場の馬鹿力って知ってるわよね? もう止まらないわよ!」


「ちょ、ちょっと待つっす! てか力強よ……!?」


 私は雅哉さんをひきづってでも前へ進んだ。だって『くっつけワンワン』と遭遇した時点で雅哉さんとえっちができるのだから。


 そうこうしてるうちに見つけた。三つ目犬だし、確実に『くっつけワンワン』だろう。


「グッ、ムラムラしてきた……」


 すると、雅哉さんが急に胸を押さえて苦しみ始めた。しかもよく見てみると、雅哉さんの棒がデカくなっている。


 私は無言でパンツを降ろした。


「み、水島さん……な、なにを……」


「私、雅哉さんのことが好きよ。だから、えっちしましょう?」


「ま、待つっす! これは『くっつけワンワン』のせいでおかしくなってるんす……」


「私はずっと本気よ。ずっと貴方のことが愛おしくて堪らなかったの! ねぇ、責任とってよ。私をこんな感情にした責任をとってよ!」


「ぬぐわァァァァァ!?」


 私が迫った瞬間、いきなり雅哉さんが駆け出して、『くっつけワンワン』を除霊してしまった。


「はぁ、はぁ、危なかった。水島さん、こういうのは恋人同士がやるもんなんす。僕だからよかったものの、ダメっすよ? 恋人じゃない僕たちがやったらダメなんす」


「じゃあ恋人になってよ! 私ずっとアピールしてるのよ! どうしていつもいつも無視するの!」


「水島さんは大事なクラスメイトだから」


「卒業したらクラスメイトじゃなくなるじゃない! 私は、貴方と恋人になりないって言ってるの!」


「恋人……」


 その後、雅哉さんは『三日返事を待ってほしい』と言って今日は解散となった。

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