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第3話 幽霊が恋愛相談してくれるらしい

「まったく、さっきは酷い目に遭ったっす!」


 私は水島栞奈。雅哉さんに片想いをしている。


 好きになったきっかけは、深夜に宿題を取りに行ったあの日。帰る道中、いきなり幽霊に襲われてしまったの。私は『殺される』と思った。けれど、雅哉さんが助けてくれたの。


 それ以来、私には雅哉さんに対して恋心が芽生えていたわ。だからあの手この手で雅哉さんにアタックしているのだけど、ことごとく躱されている。


「どうしたら雅哉さんが振り向いてくれるんだろう」


「ん? 何か言ったっすか?」


「いいえ。なんでもないわ……はぁ……」


 あの幽霊に遭遇して以来、新たな幽霊と遭遇することなく私たちは二階に到達していた。


「ここは広いから二手に別れようっす!」


「そんな、嫌よ! 離れたくないわ!」


「そうは言っても、その方が効率いいし。水島さんは強いじゃないっすか? 一人でも大丈夫っすよ!」


「そういう意味じゃなくて……」


 雅哉さんは話を聞かずに歩いて、廊下の暗闇に紛れてしまった。


「そういうところが嫌いよ……」


 仕方ないので、てきとうな部屋に入ってみるとそこは家庭科室らしかった。


「いらっしゃい」


 女の人の声が聞こえてきたので、咄嗟に振り返ると、女性の亡霊が居た。



        ◇



「あなた、想い人との恋愛がうまくいってないようね。もう死んじゃってるけど、人生の大先輩として、アドバイスしてあげる」


「だ、誰がそんな……お願いします」


「して、あなたはあの男にどんなアピールをしたのかしら?」


「手紙とか、ボディタッチとか、告白とかもしたわね……」


「ふむ、あの男は同性愛者の可能性が出てきたわね」


「雅哉くんは異性も意識してると思うの。先日、胸を押し付けた時も雅哉くんの棒おっきくなってたし」


「あなた、ビッチなの? 誰これ構わず、色んな男性にしてるから嫌われてるとかじゃない?」


「私は雅哉さん一筋です!」


「一周回って逆に不誠実ね。なぜ、あの男はあなたみたいな娘に手を出さないのか」


「ですよね。私こんなガードが強い人、雅哉くんが初めてなんです。もう、どうしたらいいのか分からない……」


 幽霊と話してるうちに、自然と涙が溢れ出して、止まらなくなってしまった。


 幽霊はあわあわと私の周りを三往復した後、何かを決心したような表情に変わった。


「ここの学園にいるあたし達、幽霊はあなたみたいな恋愛に苦しんでいる人を手助けすることが生き甲斐なのよ」


「……そうなんですか?」


「あたしが代表で言うけど、ここにいる幽霊達はみんなあなたの味方よ。これから、ありとあらゆる力を使って、あなたとあの男を恋愛的に結びつかせてみせるわ!」


「ゆ、幽霊さん……!」


「だけど最後はあなたが想いを伝えなさい。あたし達は精々お膳立て程度よ。頑張れ、若者」


 そう言って女幽霊さんは、姿を消した。


「ありがとう、諦めかけていたけど。私、頑張るよ! 絶対に雅哉さんを振り向かせてみせるんだから!」


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