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9「翌日、世界が変わっていた」

翌朝、羽臣羽衣は唖然としてた。


「――お前、それ本気で言うとんか? やばすぎるじゃろ!」


「ほんとだってば!

 昨日見た映画、

開始三分で爆発してたからね!?

 びっくりしてポップコーン飛んでったもん!」


「わははは! ポップコーンも犠牲者か!」


「長刀は爆破シーンでテンション上がるタイプでしょ?」


「そりゃあもう、爆破はロマンじゃけえなァ!」


――と、何故か昨日までめっちゃ感じ悪かった男子・十斧長刀と六夢が、

席でゲラゲラ笑い合っていた。


羽衣はその光景を前に、

口を開けたまま硬直する。


「……は、は……?」


昨日まで、というか、

昨日ぶつかったときなんて

目も合わせなかったはずなのに。

何があったの? 何が起きたの?

 世界の終わり? はたまた始まり?


「ふ、不思議すぎるだなも……!」


とりあえず六夢に声をかけようと近づくも――


「……って羽衣! おはよ!」


六夢が笑顔で振り返った。

その顔はとても自然で、

まるで長年の友達と話していたかのような笑みだった。


「お、おはようだなも……」


羽衣はぎこちなく挨拶を返すも、

内心では

「こ、これはまさか惚れた……? 

でも昨日はバチバチだっただなも……!?

えっ、これが青春……!? いやでも昨日は……」と、情報の渦に溺れかけていた。


その隣で、

長刀は相変わらずケラケラと笑いながら、


「……あー、ほいじゃあ今日の帰りはその映画の話の続きな?」


「いいよ、羽衣も一緒にどう?」


「えっ!? は、はっちも!?

い、いいのだなも……!?」


「もちろん! ね、長刀ー?」


「まあ……ええんじゃねぇ? 

はーちゃん面白いしのぉ」


「はーちゃん!?」


羽衣は驚きつつも六夢の隣に

椅子を持ってきて座った。



昨日までは、

確かに敵としか見えなかったふたりが、

今は親友のように笑い合っていて。

そしてそこに、自分も加われる。


なんだか――不思議で、あったかい朝だった。

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