目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

14「教室に残されたメッセージ」

昇降口を駆け抜け、校舎を逆走する。

六夢と長刀は、教室のドアを勢いよく開け放った。


「羽衣!!」


だが、そこに彼女の姿はなかった。


……代わりに、目に飛び込んできたのは――






黒板に殴り書きされた、

不気味な赤い文字だった。








『六枝六夢 十斧長刀へ


 仲間を殺された。

取り返すには"支払い"が必要。


よって、この場所にて待つ。


無視

       すれ                     ば

                   担保は

            消え散る

                          と思 

                                               へ。


 蟲貯むしだめより』



---


「……なんじゃこりゃ……」


長刀が低くうなる。

チョークではない――それはまるで、

異質な光沢を放っていた。


六夢の表情が曇る。


「蟲貯……。

あの女、やっぱり組織に属してたんだ……」


「殺し屋の……グループか」


「うん。名前だけは聞いたことある。

、って有名なくそみたいな組織……」


六夢の声が低く震える。

背筋に、冷たいものが這い上がってくる感覚。


「羽衣、攫われたってことか」

「……間違いない。

しかも、私たちに向けて交渉してきてる」


「これは挑発だよ。

たぶん、のつもりなんだ」


ふざけやがって、と

六夢は拳を硬く握った。

その掌からは

爪が刺さったことにより

赤い雫が一滴ぽたりと

床に落ちてった。


ふたりは黙り込んだ。

背後の夕日が、教室の窓からゆっくりと沈み、空を赤く染めていく。


その赤が


――まるで羽衣の見た夕焼けと、

繋がっているように思えた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?