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20「理解(安堵)」

目の前には、長刀のよって

拘束を解かれた小柄な少女



──羽臣羽衣。

その瞳が、おずおずと2人を見つめる。



「……はっち、ぜんぶ……

見ちゃった、も」


「……羽衣」


「……ああ、見たんじゃな。ワシらの裏を」


六夢は静かに前へ進み出る。

手には、

先ほどまで「人間だったもの」の痕跡。

瞳はいつになく冷たく、感情を殺していた。


「羽衣。

あんたがどう思おうと構わない。

でも──もし万が一

私たちを怖いって思ったなら」


「……そのときは、

もう……すまん、殺さにゃならん」


「友達でも、

それがルールなんだよ。私たちの……ね」


……    ……   ……   。


小さな沈黙があった。


しかし次の瞬間、

羽衣はてくてくと

小さな体で二人に駆け寄り、

六夢の手を、長刀の腕を、

ぎゅっと抱きしめた。



「──でも



はっち、2人のこと、嫌いになれないだなも」


「……え?」


「だって2人は、

助けにきてくれたも。

ボロボロになりながら、

こんな怖い場所に来てくれて、

はっちを見つけてくれたも……


そんなの、はっちにとってはもう、

じゃないも。

 ……ずっとずっと、だも」




六夢の肩がわずかに震え、

長刀は目を伏せたまま、拳を握りしめた。


「……そんなの言われたら……バカ……」


「……殺さんでええんか……

殺さずに、済んだんか……」



ふたりの異形の高校生が、

その夜はじめて、

人間らしい“安堵の涙”を流した。

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