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21「帰路。何気なく」

その夜、事件のあと。


街灯が等間隔に照らす夜道。

月明かりもどこか穏やかで、

風は湿って少し冷たい。


破れた制服、血のついた袖。

けれどその中で、

3人の笑い声が響いていた。




「マジで……長刀、

デブの腕ごと薙ぎ落としてたじゃん、

キモすぎー」


「うっせ、

あんなヤツの血が服についたんが

一番キモいんじゃ。

クリーニング代がもったいねぇわ」


「はっちはあの時、

2人がカッコよくて泣きそうだっただなも〜……ってか泣いてたなも〜〜」


「それなー。

てか、髪掴まれた時結構焦ったからね!? 」


「いやお前もぶちキレとったがな。

ワシが敵やったら

あそこで心折れて死んどるぞ」


3人とも、制服はボロボロ。

六夢は肘のあたり破けてるし、羽衣の髪も乱れて泥ついてるし、長刀に至ってはシャツが血で染まってる。


でも、誰もそれを気にしてない。


「あっ、マックまだ開いてるだなも!

アップルパイ食べたいなも〜〜♪」


「チキンクリスプ買う。

てかナゲットも食いたい」


「ワシ、てりやきセット……金ないけど」


「え、出してくれるよね? 

んねぇ羽衣〜ぉ♪」


「え〜〜〜!? 

はっち、お金持ってないもー!」


「いや財布ねぇのかよ!?」


「結局、誰も金持ってねぇんかいッ!」



3人して笑いながら、マックの灯りに向かって歩く。

血の匂いと泥と汗の中で、

それでもこの夜は、どこか温かかった。



そして羽衣もまた、理解してくれる

友人がいる居場所を見つけられた瞬間だった。

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