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22「ともだち」

また別日、昼休みの教室。

もうすぐチャイムが鳴るというのに、

掃除道具を押しつけられた羽衣は、

困ったようにほうきを握りしめていた。


目の前には、

クラスでもっとも

目立つ女子グループのリーダー。

薄く笑いながら、肩に手を置いてくる。


「ごめーん羽衣ちゃん、

また掃除お願いしていい?

あたしィ、ネイルやんなきゃでぇ~」


後ろには、

取り巻きの数人がクスクスと笑っている。

いつものように、

羽衣が「なも」と頷けば終わる話だ。


……でも今日は、違った。


「……やなも」


はっきりと、そう言えた。


女子が目を細める。

「は?」と語尾が鋭くなる。


「毎回毎回、

それってズルいも。

掃除は交代でやるものだなも」


羽衣は、声を震わせながらも言葉を続けた。

喉の奥が熱くて、膝も少し震えている。

でも――動物たちと話す自分を気持ち悪いって言われたあの日より、怖くない。


「はぁ~~?

何言ってんのアンタ。いい加減に――」


女子が羽衣の肩を掴みかけた、その時。


「……やめといた方がいいと思うけど?」


低い声が響いた。

入り口のドアが開いていて、

そこには長刀と六夢が立っていた。


長刀はじろりとつかさを見下ろし、

六夢はニッコリと笑いながらも、

その目だけは笑っていなかった。


「掃除を押しつけて、

ワレはサボるのが上のやり方ってわけかァ?」


「……あんたたちには関係ないじゃん」


女子が反論しようとするが、

次の瞬間、六夢がにっこり言った。


「ねぇ……私、

けっこーすごくムカついてんだけど?


____この拳をその天狗鼻に

ぶち込みたいんだけど……誰からご希望かなん?」


女子とその取り巻きの顔から、

すっと血の気が引いた。


長刀は黙ったまま背後のモップを手に取り、

バキッと軽く真っ二つに折る。


「きゃっ……!!」

「な、何アレ!?やばいヤバイッ」


女子と取り巻きは悲鳴を上げ、

逃げるように教室を出て行った。

ドアががらりと閉まり、静けさが戻る。


ポカンとしていた羽衣は――ふいに涙が出そうになるのをこらえながら、

二人に駆け寄った。


「ありがとなもぉ!!」


そのまま、長刀と六夢にぎゅっと抱きついた。


六夢は羽衣の髪を撫でながら笑い、

長刀は「よォ言った!」とがははと大笑い。


「もう大丈夫。

あんたには、私たちがいる」


「何があっても、守るけぇの」


その言葉に、羽衣は満面の笑顔で頷いた。


「仲良し3人組」――

この日、それは本物になった。



⬛︎ ⬛︎ ⬛︎


「……てか長刀、あんたその

モップどうすんの?」

「怒られるなも流石に……」


「十斧、お前職員室な」


「……へい」


※きちんと説教されました。

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