午後の授業、空は少し霞んだ春の光。
教室の空気も、どこかそわそわと浮ついていた。
「……さて、童共よ。
明日から、いよいよ春休みに入るぞ」
教壇に立つ依燐(えりん)先生が、
静かに、それでも凛とした声で言うと、
教室のあちこちから「やったー!」と小さな歓声が上がる。
「ふふ、よーし! 春休みだ春休み!」
六夢は椅子の上でぴょこぴょこと小さく跳ねるように喜んでいた。
「……フン、
授業まだ終わってねーのに、浮かれおって」
依燐先生が目だけで射抜くと、
生徒たちはすぐに背筋を正す。
____が。
「……Zzz……」
その中で、一人だけ机に突っ伏したままの長刀。
「長刀……貴様、聞いておったか?」
「……んぁ、
お、おお、聞いとるよ先生……春……休み……」
「ふむ。ならば、
明日からの課題がどれほどあるか申してみよ」
「……か、かだいっ!?!?!?」
目を白黒させる長刀に、
教室がどっと笑いに包まれる。
「静かにせい。課題は、
国語のワーク三章分、英語の読解、
数学のドリル、
理科の小レポート、
歴史の年表まとめじゃ」
「う、うわぁ……」
「……ひ、ひぃ……」
教室のテンションが一気に地を這うように低下する中、
羽衣が静かに手を挙げる。
「せんせっ
理科のレポートは自由研究形式でよいだなも?」
「うむ、良い質問じゃ羽衣。観察記録でも考察でも構わぬ。
のう、そちたち。
……春休みであろうが、鍛錬は怠るなよ」
依燐先生が言い終えると、
また生徒たちから小さな悲鳴。
でもその中で、六夢だけは、ぽわんとした顔で浮かれていた。
(春休み……夢羽といっぱい遊べるなぁ……!)
宿題の山のことなど、
完全に脳の片隅に押しやって。