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36「夢羽ちゃん、今日は一日あそぼーね!」

朝9時少し前。

まだ人がまばらなデパート前、快晴の空に涼しい風が吹いている。


「夢羽、寒くない? 大丈夫?」


「……うんっ」


六夢は夢羽の手を握り、ほっと一息。

初めてのお出かけで緊張しているのか、夢羽は少しだけ表情がこわばっていた。


けれど――


「おーいっ! おっまたせ〜!」


派手なチェックシャツに迷彩柄の短パン、足元はハイカットの赤いスニーカー。

まるでカラフルな洗濯物の山のような服装で走ってきたのは




――長刀。


そのすぐあとに、白いブラウスにリボンタイ、紺のフレアスカートというまるで雑誌のように整った私服姿の羽衣が到着した。


六夢が長刀を見るなり、吹き出す。


「ちょっ、長刀!

何その服!!

ダサすぎて逆に天才かよッ!!」


「なんじゃとぉ!?

ワシなりにオシャレして来たんじゃけど!

むしろ逆にイケとるじゃろが!」


長刀がぷんすか怒るが、

完全にネタキャラと化している。


六夢は腹を抱えて笑いながら、

夢羽のほうを見る。


「夢羽も見て!

ダッッサいでしょ~?」


すると夢羽は、少し戸惑いながらも――くすくすっ、と小さく笑った。


「……ほんとに、

ちょっと……おかしい、なの……」


「おぉぉおい!!

夢羽ちゃんにまで言われたら

ワシ立ち直れんけぇ!!」


「ふふっ……」


夢羽の口元に自然な笑顔が浮かぶ。


六夢はそれを見て、

心の中で小さくガッツポーズ。


(よし……今日は、楽しくなりそう!)


羽衣がやさしく微笑んで言う。


「夢羽ちゃん、今日は一緒にいっぱい遊ぼうね」


「……うんっ!」

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