「ねぇねぇ、
最初はさ、ジェットコースター行かない?」
と六夢が提案すれば、
「ええで!
ワシ、こういうん大得意なんよ!!」
長刀が鼻息荒く前のめり。
「夢羽ちゃんが怖がったら、
はっちが守るだなもぉ」
羽衣もいつになく頼もしい。
羽衣自身も背は小学生レベルに小さいので
まるで小さい子が小さい子の面倒を見てるようだ。
夢羽は一瞬不安げに六夢の袖を引っ張ったけど、六夢が笑って「大丈夫だよ、手つないで乗ろ」と言えば、こくんとうなずいた。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
数分後、
四人を乗せたジェットコースターは空高くぐんぐん登っていき――
ギャアアアアアアアアアアア……!
風を切って落ちていく
轟音と悲鳴が遊園地中に響いた。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「……っっっ、あ”あ”あ”~~~~~……!」
降りた直後、
長刀はフラフラとよろめき、
ついには端っこで盛大に嘔吐。
「う゛おええええ……ワシもう無理じゃぁぁ……」
その横で、羽衣が絶叫。
「うぎゃーっ!!
ゲロゲロゲロッピーだなもーっ!!
近寄るなだなもぉぉお!!」
ぴょんと大きく飛び退き、
3メートル以上離れる。
六夢は咄嗟に長刀の背中をさすりながら、
(あーやっぱこうなると思った……)と内心ため息をついた。
が、ふと――
(やば、夢羽泣いてないかな!?)
慌てて振り返ると、
そこには、目をうるませて――嬉しそうに微笑む夢羽の姿。
「……も、もういっかい……のりたいなの……!」
「……えっ!?」
六夢は一瞬時が止まったように目を見開く。
てっきり泣いてるかと思ったのに、控えめな声とともに夢羽は、
小さくガッツポーズをしていた。
「う、嬉しかったの? 楽しかったの??」
「……うんっ
たのしい、なのっ」
さっきまで緊張で固まっていた少女の顔に、
ほんのり火照ったような赤みと笑顔。
それはたしかに、はじめて見る無邪気な表情だった。
六夢の顔がほころぶ。
「そっか……じゃあ、長刀が回復したらまた乗ろっか!」
「や、やめろ……! 二度と……ワシはもう……」
地面に座り込んだまま、長刀はか細く呻いた。
「だなも、
回復までアイス与えるしかないだなも……」
羽衣も遠くから心配してはいるものの、距離は頑なに守っている。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
こうして、
ひとり酔い潰れ、
ひとり絶叫しながら回避、
ひとり姉ムーブ炸裂、
そして____ひとりご満悦な夢羽。
四人の遊園地めぐりは、
予想外のスタートを切ったのだった。