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37「射的」

「次、射的コーナーだって!

行こ行こ!」


六夢が看板を指差して走り出すと、

羽衣も「だなも!」と後に続く。

夢羽はというと、景品棚の上段に並べられた。



ふわふわの白いうさぎのぬいぐるみに

目を奪われ、思わず立ち止まっていた。


「あれ……ほしいなの……」


夢羽がぽつりとつぶやく。


それを聞いた長刀、

キリッと目を細め、言った。


「……まかせとけや夢羽ちゃん。

あれは、ワシが取っちゃる」


「えっ!?

無理でしょ、

あんな上段にあるやつって

だいたいダミーだよ?インチキまみれで

どうせ接着剤ついてるパターンだって」

と六夢が眉をひそめる。


「いや、ワシ、射的は得意なんよ」


「え? まさかまたハッタリじゃ……」


「ハッタリじゃない。本当じゃ」


口調はいつも通りなのに、

銃を構えるその姿には

____一切の隙がなかった。


⬛︎ ⬛︎ ⬛︎


パン……ッ


「うそ……一撃で倒したあ!?」

「なもぉ!?」


六夢と羽衣が目を丸くする。


しかもそれだけじゃない。

連続して3発、4発……

どれも全部的中し、

ぬいぐるみの前を塞いでいた

景品たちが次々に落ちていく。


そして____。


最後の一発で、

白いうさぎのぬいぐるみが

ふわりと棚から落下した。


「す、すごすぎるも……」


「えっ、もしかして……

長刀って、

薙刀だけじゃなくて弓とか銃もイケる口……?」


羽衣が目を輝かせ、

六夢が唖然としてると、

長刀は少し照れくさそうに鼻をこする。


「んまぁ……弓も昔ちょっとやっとったんよ。

 標的狙うのは、似たようなもんじゃけぇな」


「ひええ……これはモノホンの暗殺者……」

六夢が思わず拍手。


夢羽の前に差し出されたうさぎのぬいぐるみ。


「……あ、ありがとなの……!」


ぎゅっと抱きしめる夢羽に、

長刀は頭をぽんぽん。


「大事にするんよ」


その言葉に、

夢羽の頬はほんのり赤く染まる。



⬛︎ ⬛︎ ⬛︎


その横で、六夢がぼそっと。


「……やるじゃん、長刀。

正直ちょっと惚れそうになったわ。

抱いてー(笑)」


「ちょ、や、やめぇやきっしょいのぉ!!」

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