くるくると、メリーゴーランドが回る。
木馬の背で楽しそうにはしゃぐ夢羽と羽衣。
「わあ、はやいなの!」
「だなも〜っ、風がきもちいいだなも!」
夢羽の笑い声は、
風に乗ってベンチまで届いた。
六夢は少し離れたベンチに腰掛け、
ペットボトルのお茶を飲みながら、
その光景を優しく見つめる。
隣には長刀が座っている。
彼もまた、飽きもせず、
くるくると回る木馬を目で追っていた。
六夢はふと、夢羽の笑った時の顔を思い返す。
特に
____あの目元。
あの子の笑ったときの目……
どこかで見たような。
「……誰だっけ、あの感じ……」
六夢は、口の中でぼそっと呟いた。
そのとき。
「よし、見とれ、六夢!」
突然、長刀が立ち上がると、
両手を挙げてメリーゴーランドの
夢羽と羽衣に向かって、
変なポーズを取りながら踊り出した。
「いえーい!
回っとるのう、くるくる祭りじゃあ!!」
「ちょっ、なにやってんの長刀!!」
「笑わせに行くけぇ!!」
夢羽と羽衣が驚いて、でもすぐにケラケラと笑い出す。
「なぎなたおにいちゃん、変なの!」
「だなも〜!
へんなのおどってるだなも〜!」
六夢は、
夢羽の笑顔に宿る
「……まぁ、いっか。今は、楽しい時間だしね」
そう言って、自分もベンチを蹴って立ち上がる。
そして――
「どけどけ〜! 六夢様も混ざるぞ〜!!」
長刀の横に並んで、
変なポーズで踊りながら、
夢羽と羽衣に手を振る。
皆が笑って、
はしゃいで、
明るい声が空に響いた。
たとえ、心のどこかに引っかかる違和感があったとしても――
今は、夢羽の笑顔がすべてだった。