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43「四十万診療所」

六夢は、

臨夢たちと共に

まだ息がある血にまみれた

夢羽を抱えて夜の路地を駆け抜けた。

シーツに包まれた夢羽の身体は軽すぎた。

小さな胸は浅く、弱々しく上下している。


「……絶対、死なせるものか!」


 呼吸が荒くなろうが、足が痛くなろうが、止まるわけにはいかない。

 後ろから弦夢と臨夢の足音も聞こえる。芽夢は泣きながらついてきていた。




⬛︎ ⬛︎ ⬛︎




 ──ようやくたどり着いた。

人気のない裏路地、

錆びた鉄扉を蹴破るように開く。


四十万しじまっ!お願い出てきて!

急患だ!!!」


乱暴に怒鳴ると、

しばらくして奥から男が姿を見せた。






 四十万映司しじまえいじ

──闇医者として裏社会に名を馳せる男。


「こんな夜中に随分と騒がしいな……

何だ一体──」


言葉を切らせたのは、

六夢が抱えた少女の姿だった。

両腕がない。右目もくり抜かれ、

血に染まった顔。おぞましいほどの負傷。


「……ひでぇなこりゃ。よく生きてる」

「四十万!!

絶対に……絶対に、この子を死なせないで!!」


四十万は軽く舌打ちし、

すぐに手術の準備を始める。

臨夢と弦夢が運び込むのを手伝い、

芽夢は震えながら祈るように唇を噛み締めていた。

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