「この後を期待していいのかな」
「う~ん、それはあなた次第かな?」
どうしよう。この
内心の焦りをひた隠し、私は悪戯っぽい顔で彼の瞳を覗きこむ。
もう一度、彼が私の顎に手を掛けた時。
「おっと、さっちゃん。そこから先は外でやってくれる? ウチはそういう店じゃないんでね」
少しラフに、リョウちゃんが私達を嗜めた。
「悪いね、会計を」
スッと彼が立ち上がり、私の肩をトンと叩く。合わせて私も立ち上がる。
これってついに……?! 内心のドキドキが止まらない。
「まいど」
彼は私の分まで会計すると、先に小さな扉を出た。
春先の、夜気の程好い冷たさが、酔った身体に心地良い。
「ん~、気持ちいいっ」
私が手足をウーンと伸ばすと、彼がゆったりと微笑んだ。
「君はどっちが本当の姿なのかな。子どもっぽい方の君?」
「ち、違うわ、そうじゃない」
私は慌てて手を下ろした。
私と彼は、ふざけ合いながら往来を歩いた。夜11時でもまだ沢山の人が往き来している。
「きゃ…」
前から来た数人連れの男の足に躓いた拍子に、思わず彼の腕にしがみつく。
酔っ払いが振り返り、ギロリと私を睨みつけた。
私は一瞬怯んだが、彼が私の肩を抱き寄せて一覧すると、そいつはチッと舌打ちして、そのまま向こうへ行ってしまう。
その後も彼は肩を抱いたまま、ロマンチックな演出に、2人はだんだん無口になって寄り添い歩く。
彼は道中に電話を入れ、手慣れた様子でホテルの空きを確認した。
……どどど、どうしよう。
一夜の冒険。
目論み通りの筈だったのに、その時初めて、私は現実的にこれから先のことを意識し始めた。