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第4話

かじかが葉月はづきと出会って、一年がつ。

丁度ちょうど出会った頃と同じように、飲み会があるらしく、メイから間に合わせの連絡があったが、傍にいた葉月はづきが大きく息をいた。


『あー、行かなくていいよ。』

『そう?新歓しんかんねてるって聞いたけど。』

『そうだけど、メイちゃんは彼氏いるんだろ?だったら大丈夫だけどさ。』

『うん?』


葉月はづきはかじかに眉をひそめる。

『もう、わかってないな。かじかは二回目だけど結構けっこう気にされてるわけだ。わかる?彼氏いないってわかってる連中は、何がなんでも接点せってん持ちたくなるだろ。』

『そういうもん?』

『そう。』


『ふうん・・・でもさ、ちまたでは私たち付き合ってるって聞いたけど・・・そういうことなら気にすることないんじゃ?』

かじかがサラっと言うと、葉月はづきはムッとした。


『違うじゃん。まあ・・・そりゃあ、そうだとしても、かじかが望めばそうもなるし。』

『どういう意味?』

『あー、もう。いいから・・・とにかく行かなくていい。わかった?』


葉月はづきの困り顔に、かじかは笑いが止められず歯を見せた。


『アハハ、行っちゃおっかな。』

『だから!もう・・・お前わざと言ってるだろ。』

少し怒気どきはらんだ声に、かじかは苦笑くしょうする。


『ごめん・・・。』

『・・・いいよ、もう。でも本当にさ、自分を大切にしなくちゃ駄目だよ。』

『え?』


葉月はづきは両手をポケットに突っ込むと、かじかを見下みおろした。


『かじかはどっか・・・背が高いとか色々気にしてるっぽいけどさ。そんなの男から見りゃあマイナスにはならないよ。女の子は皆、少しずつ素敵に変わっていくもんだし・・・前と比べたらお前は可愛くなった。』


真面目まじめな顔をして言う葉月はづきに、かじかの頬が熱くなる。


『フフ、そういう照れるとこも・・・可愛い。そういうの意識してなかったんだろ?』

『・・・うん。』

『なら、これからは意識して・・・自分が魅力的みりょくてきだってこと覚えておくべき。かじかなら簡単に男落とせちゃうんだぜ?』


『そんなの・・・嘘だよ。』

かじかが顔を上げると、葉月はづきは困った顔をして微笑ほほえんだ。




ときどき々見せる、葉月はづきの優しい顔が困る。

意識してなかったけど、あんな顔されたら恋人じゃないのに、そんな気分になってしまう。


待ち合わせの時間までもう少しある。

早めに来てしまった自分が恥ずかしい。

どうやら浮かれている感じがして、傍のカフェでドリンクを買うと、待ち合わせ場所に戻る。


冷たいカップが指先を冷やしていく。

頭を冷やすには丁度ちょうど心地いい。

道の向こうから葉月はづきが歩いてくると、すれ違う女の子たちが彼に振り返った。

葉月はづきは前しか見ておらず、周りの視線など関係ないらしい。


『待った?』

一見いっけんチャラいこのイケメンは、サングラスをずらして笑ってみせる。


『待ってない。ドリンク飲んでたし。』

『ああ、俺も飲みたい。』

『買いに行く?』

『いや、いい。』


葉月はづきは手を伸ばすと、ドリンクのストローをくわえた。

葉月はづきの髪が、かじかの頬に触れて、甘い匂いが鼻をかすめる。


『うーん、甘い。うまい。うん?』

急な接近に、かじかの心臓がドッと走り出していた。

ぎゅっと目をつぶり、顔をそむける。


『どうした?』

『なんでもない。』

『うん?』


葉月はづきが顔をのぞきこむので、手に持っていたドリンクを葉月はづきに押し付けた。

『ほら、飲みなよ。美味しいよ?』

『ああ、ありがと。』


何、これ?

だって葉月は友達じゃない。おかしいよ、こんなの。


隣を歩く葉月はづき見上みあげる。

サングラスを外した顔はいつもどおりで、かじかの視線に気付くと優しく笑った。


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