最近の自分は変だと思いつつ、
かじかは
何かメッセージが来ているらしく、点滅している。
気が散るといけないから手には取ってはいないが、さっきから数分置きくらいに届いている。迷惑メールの
またピコンっと音がして、かじかは仕方なく携帯電話に手を伸ばした。
『うん?』
メッセージは
開くと今、
『何してる?』
『課題やってる。』
『課題?進んでる?』
『進まない。ウサギにしようかネコにしようか悩んでる。』
『うーん、じゃあネコにしたら?』
『ネコか、そうしようかな。』
『出来たら見せて。俺まだ、かじかの作品みたことないし。』
『まじで?』
『うん、誰かに見せるために作るほうがモチベ上がるよ?』
『そっか・・・そうやって作ってるの?』
『うん、俺は
『わかった。頑張ってみる。』
『うん、頑張れ。』
やり取りが終わり、電話の向こう側で
最近本当にこういう感じになることが多い。
なんだかんだ一緒にいて、いろんな話をしている。
それでも時々、ドキっとすることが多くなって、どこか
かじかはラップトップに向かうとネコを
デザインは、モチーフは、考えることは
以前作った画像のファイルを呼び出すと、一つ一つ確認を始めた。
『で、課題クリアしたんだろ?』
カメラをいじりながら
かじかは両手を伸ばすと
『うん、今回はありがと。助かった。』
『そっか・・・で、俺はそれ
『え?』
『見せてくれる約束じゃん?』
『そうだっけ。じゃあ。』
かじかは鞄から小さなパソコンを取り出すと、電源を入れた。
すぐに立ち上がりデータを呼び出すと
小さなネコと風景のアニメーションだ。
『おお、凄いじゃん。てか・・・上手だな。』
『そう?ありがとう。』
『うん、色合いとか最高。俺の好きな色だ。』
『そう、ネコにしたらって言ってくれたから。それに誰かのために作ると、モチベ上がるって言ってたでしょ?だから好きなのに寄せてみた。』
『そっか・・・。どうだった?』
『上がった。ってか・・・凄い楽しかった。』
『だろ?』
『うん・・・ありがと。』
『うん。俺もさ、今回は色々撮ってるけど、最高のができそう。』
『そうなの?』
『ああ、出来たら見せる。課題とは違うのでコンテスト用のやつ。応募するかはわかんないけど・・・。』
『応募しないの?』
『個人的に撮ってるからなあ・・・。』
『そっか。前のさ・・・賞取ったの素敵だった。』
『ああ、あれはさ、まぐれだと思う。いつもラッキーなんだって思ってる。だってさ、良い写真ばっかなんだぜ?
『
『まさか・・・いっつもドキドキしてるよ。今だって。』
『今?』
かじかが
二人の距離が少し
別に手を
ただ一緒にいて話をしているだけ。二人で楽しい時間を過ごしているだけ。
これからランチを一緒にするわけだが、以前と比べて、かじかにとっても特別になっている。
席についてから携帯電話に目を落としていると、傍に誰か立っている気配がした。
ふと視線を上げると綺麗な女の子が立っている。
『ええと?』
かじかが驚いて声をかけると、綺麗な顔のその子は眉をひそめた。
『ねえ、
『え?』
かじかの言葉に彼女の目がつり上がる。
そばの椅子に座ると、かじかの顔を
『付き合ってないなら、こうやって会うの止めてくんない?
『・・・あ、友達だから。』
『友達だったら、なおさら止めて。』
『あの。』
かじかの手を
『本当に・・・お願い。好きじゃないなら止めて。』
綺麗な顔に大きな瞳が揺れている。かじかは困って、うつむくしか出来なかった。
『ごめんなさい・・・。』
彼女の手を
『・・・約束はできないけど・・・迷惑はかけないから。』
席を立ってカフェを出る。
足早に駆け出すとその場から逃げ出した。
綺麗な女の子。
たまらなくなって逃げ出してきたけど、鞄の底のほうで携帯電話が鳴っている。多分、
さっきの彼女の泣きそうな瞳が忘れられずに、鞄を開けられなかった。