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第3話 推しが美少女配信者と地獄のコラボした件について

「ちょっと待てやコラァァァァ!!!!!」


「うわ、第一声がクソ雑魚陰キャの悲鳴で草ァ」


朝8時。

目覚ましも鳴る前、俺のスマホがけたたましく震えた。画面には通知の山。全ては一件の【コラボ配信告知】のせいだった。


『【LiveDungeon公式】配信者コラボ決定!』

▶︎返金系底辺配信者・南雲サトル × 戦姫系トップ配信者・白雪レイナ

▶︎テーマ:「返金か美貌か、生き残るのはどっち!?」

「いや!聞いてねぇし!?いつ俺が了承したんだよ!!?」


「私が代わりに押しときました♡」


「やっぱお前かよレンさん!!」


「だって面白そうだったので」


「ノリが大学の文化祭レベルなんだよ!!俺は命かかってんだぞ!!」


◇ ◇ ◇ 


白雪レイナ――配信者ランキング不動のトップ。

容姿:完璧。スタイル:完璧。ファンサ:神対応。配信内容:バトルしながら雑談、料理、時々猫耳コスプレ(※ただし高難易度ダンジョン内)。


登録者数は1500万人。スパチャは月億超え。

にもかかわらず、何故か俺に敵意むき出しである。


そしてコラボ当日――

待ち合わせ場所に現れたレイナは、想像以上に現実味がなかった。


「お待たせ〜♡って、うわ、ほんとにあんた来たの?」


「いやそっちが呼んだんだろ!?俺だって逃げられるなら逃げたわ!」


白雪レイナ。髪は銀。目は紫。戦闘用のミニドレスに、腰のホルスターにはデジタルマジック銃。


人間離れした美貌に、配信特化型の戦闘装備。


「やっぱ本物だった……存在していいのかこんな絵面……」


「そっちこそ、画面越しより死にそうで笑っちゃうわ。今日もスパチャ回収のためにギリギリまで血ィ吐いて♡」


「吐きたくねぇわ!!てかなんでそんな敵意あるの!?」


レイナは指をくるりと回してカメラON。


「みんな〜♡今日のコラボ相手は、スパチャ返金詐欺で有名な南雲くんでーす♡」


「言い方悪意しかない!!!」


【来たな清楚姫!】

【返金詐欺マンとコラボw】

【これはスパチャ投げるしか】

【推しが命のやりとりしとる】

◇ ◇ ◇ 


ダンジョンは“死霊のラビリンス”。

ランクA。別名「観客が拍手しながら祈るレベル」の配信向き地獄MAP。


入り口で武器チェックをする間、レイナがボソリ。


「……あんたさ、知ってる?」


「なにが」


「この業界、本気で“死者”出たことあるって」


「……は?」


レイナは目を伏せる。


「三年前、まだLiveDungeonがテスト運営だった頃。ウチの同期で、たった一人だけ“ギリ生存芸”に手を出したやつがいた」


「……」


「結局そいつ、リアルでモンスターに食われた。で、翌日にはスパチャ返金されて、そのチャンネルはランキングからも除外されて、誰も話題にしなくなった」


「……」


「そんな業界で、あんたみたいな奴が“バズって”るの、普通にムカつくわけよ」


「……!」


彼女の瞳に、ほんの一瞬だけ、冷たい怒りが宿った。


◇ ◇ ◇ 


とはいえ、この女……戦闘中はノリノリである。


「レイナ様いっきま〜す♡《氷結魔弾・クレメンタイン》っ!」


一瞬でダンジョンのゾンビ三体を凍らせ、そのまま高笑い。


「ハイ♡今のキメ顔タイムでスパチャお願いね〜♡」


【かわいすぎる】

【はい神回】

【レイナ様の氷結マジ尊い】

「おまえ、切り替え早ッッッ!!」


一方の俺は、背後から幽霊に肩をつかまれながら、震える手で武器を構える。


「こ、こっちは生きるのに必死なんだけど!?」


【いい顔してる】

【やっぱ南雲だわ】

【死相出てて草】

「視聴者もノってくるな!?頼むから一人くらい心配して!?」


◇ ◇ ◇ 


そして問題のシーンは突然やってきた。


通路の先に現れたのは、レイドボス級の死神型モンスター。


黒のマント、鎌、そして威圧感。


「……え、ちょ、今日ってそういう配信じゃないよね!?」


「わかんない♡たぶん運営のサプライズ♡」


「軽ッ!?死ぬかも知れないんだぞ!?」


「安心して、あんたが盾になるから♡」


「おいィィィ!!」


◇ ◇ ◇ 


カメラが回り、スパチャが飛び、コメントが炎上し、

俺は死神の一撃を回避しながら絶叫する。


「うおおおぉおおお!!生きたくねぇぇええええ!!!」


「ちょっと言葉の意味バグってない!?」


【ギリ生存芸は文化】

【レイナ様のツッコミ助かる】

【今日の配信で人生変わった(?)】

やがて、なんとかギリで死神を撃退。

俺は床にへたり込み、ゼェゼェと呼吸を整え――レイナを見る。


彼女は……ほんの少しだけ、笑っていた。


「……ギリギリで、面白かったじゃん。あんたのこと、少しだけ見直したわ」


「いや、これ……まだ俺、生きてるんですけど!?というか死にかけてるんですけど!?」


【最高のコラボだった】

【またやってくれ】

【次はリアルでデート配信お願いします】

【南雲が報われる未来が見えない】

◇ ◇ ◇ 


配信終了後、レイナが一言。


「次もコラボ、呼んでやってもいいよ」


「誰が呼ぶかァァァアア!!」

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