彼女たちは、私の一番の親友。
前世、望月家があの恋愛脳の光哉に潰された時、助けてくれたのは彼女たちだった。
光哉には敵わなかったけれど、苦難の中で示された真心は、ずっと胸に刻んでいる。
私は、光哉と離婚することを彼女たちに伝えた。
生まれ変わりについては、もちろん伏せて。
聞き終えた三人は数秒沈黙し、声を揃えて拍手した。
「よし! 美雪が恋愛脳から抜け出すお祝い、今夜は飲み明かすぞ!」
「乾杯!」
私も嬉しそうに叫び、細い腕を高く掲げた。
酔いが心地よく回る中、離婚後の新しい自分が、前世の惨劇を遥か後ろに振り切って駆け出していく幻が見えた。
何杯か酒を重ねるうちに、度胸も大きくなった。
優佳が私の肩をポンポンと叩く。
「美雪、店に好みのイケメンいない? 怖がらず、気に入ったらナンパしちゃえよ! 光哉ったら毎日浮気の噂ばかりなんだから、負けられないわ!」
「そ、そうかもね…」
私はぼんやりした目で店内を見渡し、ある背中に視線が止まった。背が高くて痩せていて、若々しい服装の大学生らしい男。
光哉が女子大生を相手にするなら、私だって男子大生を探したっていい。
グラスを手にふらつきながら近づき、その少年の肩をぽんと叩いた。
「ねえ、イケメンくん。お酒、飲まない? ごちそうするからさ…」
振り向いた少年は、思ったより爽やかだった。
彼は一瞬驚いたが、すぐに申し訳なさそうに首を振った。
「すみません、お姉さん。僕、彼女がいるんです」
「え? ごめんね…じゃあ、彼女いない人を探すわ…」
私はペコリと頭を下げ、アルコールで麻痺した舌は自分でも何を言っているのか分からず、また別の男を探そうとした。
二歩も歩かないうちに、誰かに足を引っ掛けられ、グラスは粉々に砕け、頭がくらくらして、その場に倒れ込んだ私は、そのまま寝てしまいたい衝動に駆られた。
「お姉さん、手伝いますよ」
さっきの男子大生が手を差し伸べてくれた。
地面に座り込み、上を見上げる私の顔は真っ赤になっていた。
幻覚か? 男子大生の顔が光哉に変わり、冷たく私を睨みつけている。
慌てて起き上がろうとしたが、手が砕けたガラスの上に着いてしまい、鮮血がにじみ出た。
二秒ほど呆然とした後、目の前が真っ暗になった。
「望月家ごときが俺を止められると思うか?」
夢の中で、光哉の顔は残酷で冷酷だった。
私は荒れ果てたリビングにへたり込み、涙が止まらなかった。
光哉が離婚を決意した時、望月家は片桐家と協力して圧力をかけた。
しかし光哉は強硬に押し切り、多大な代償を払って望月家を潰した。
片桐家の長老たちは反対から半ば諦めた協力へと転じ、ついには萌香を受け入れてしまった。
彼の狂気じみた庇護のもと、彼女は次第に認められていった。
その時、萌香はすでに妊娠していた。
「光哉…私、十年もあなたを愛してきたのに、少しも好きになったことないの?」
私は顔を覆い、指の間から涙がこぼれ落ちた。
「ない。さっさと別れようと言っただろう、お前がそれを無駄にしたんだ」
彼の声は冷たかった。
携帯電話が専用着信音で鳴り響く。「ご主人様、お電話です!ご主人様、早く出てください!」
甘い女の声着信音の中、彼は足早に去っていった。
私は天地がひっくり返るようなめまいと、胸の激しい痛みを感じた。
窒息しそうになり、私はハッと目を覚ました。
激しく息を切らし、自分が寝室にいることに気づいた。窓の外は眩しいほどの晴の日。
あの男子大生が助けてくれたのか?
包帯を巻かれた手を見て、激しく痛むこめかみを押さえながら彼を捜そうとしたが、その時、ドアの外に光哉の声が聞こえた。
「お前らだけでやっとけ、今日は興味ない」
彼は二階の手すりにもたれ、指の間に煙草を挟み、だるそうな声で背筋は真っ直ぐだった。
私はドア枠に掴まり、近づいてくる彼を見つめて尋ねた。
「あの人、どこに隠したの?」
「誰をだ?」
彼は眉をひそめた。
「男子大生」
光哉以外で初めて気に入った男だ、見逃すわけにはいかない。
どうせ一ヶ月もすれば、光哉は別の女に夢中になるのだから。私も慰めを見つけて、苦しみを紛らわせるべきだ。
光哉の整った顔に、一瞬で怒気が走った。
彼は私の服装を一瞥すると、手首を掴んで衣装部屋に引きずり込み、
「ちっ、着替えろ! 誰がこんなセクシーな格好を許した?」
「セクシー?」
私はかすかに膨らむ胸元を見下ろした。布地だけでなんとか形を保っている状態だ。
そんな言葉は似合わない。それに、私を愛さない男が、私のセクシーさなんか気にするわけがない。
「光哉、この間、あの若手女優とホテルに入ったって噂、本当なの?」
私は動かず、静かに尋ねた。
「お前に干渉される筋合いはない」
やはり、いつもの答えだった。
「じゃあ、私のこともこれから干渉しないで。離婚しないなら、お互い好きに遊ぼう」
私は淡々と言い返す。
長年愛に飢えていたのだから、せめてホルモンを求めさせてくれ。堕落する感覚は心地よく、魂が体に戻ってきたような気がした。
男は生まれつき二枚舌だ。自分は好き放題やっておきながら、妻には貞潔を求める。
光哉も例外ではなかった。彼は私を愛していないが、名目上はまだ彼の妻。
「俺に浮気させようってのか?」
光哉は嘲笑し、意地悪く私の深Vネックラインを指でかき分けた。
「こんな体で男が好むと思うか?」
私は見下ろした。胸を守るヌーブラがしっかりと隠している。
これが一番小さいサイズだ。
私は彼の手を払いのけ、冷静に服を直した。
「これからたくさん食べて、パパイヤ牛乳も飲んで、あなたも浮気される気分を味わせてみるように頑張るわ。」
「お前、マジでおかしくなったのか!?」
ついに光哉は爆発し、私を睨みつけた。
「この二日間、何か薬でもやったか?」
かつての片桐美雪は、落ち着きがあり物分かりが良かった。こんなでたらめを口にするはずがない。
もし父が聞いたら、心臓麻痺を起こしてしまいそうだ。
しかし、まず狂ったふりをしなければ、これから狂おしくなる光哉の手からは逃げられない。
萌香がいなければ、彼は離婚などしない。ビジネス結婚は遊びじゃない、彼は極めて理性的な人で、利益を図るのが得意。でも、もう彼が他の人を好きになるのを見たくない。
「だから、光哉、私と離婚して。」
私は再び切り出した。