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第3話


「ふう。このフロアのモンスターは全部倒したかな?」


「さて、視聴者の反応は……って、えっ!?」


「なにこの視聴人数!?」


 モンスターを倒し終わって配信画面を確認したユウとジョウは目を丸くした。

 誇張無しに、配信の視聴者数がいつもの百倍だったからだ。


≪バズってるよ!!!!!≫

≪ユウくん、ジョウくん、おめでとう!!!≫

≪この二人が配信者? 顔面偏差値高めだなおい≫

≪ふーんエッチじゃん≫

≪イケメン配信者かよシラケたわ≫

≪それよかカメラマン映せ≫

≪カメラ持ってるから無理だろwww≫

≪ユウとジョウが人気配信者になっちゃう!!≫

≪メジャーへ行っても私たちのこと忘れないでね!≫

≪おれたちが注目してんのそいつらじゃないからwww≫

≪カメラマン何者なんだよ!?≫


「待って待って、コメントが早すぎて読めないって」


「みんな落ち着いて」


 視聴者が多いことは嬉しいものの、いつもとは全く違うコメント欄にユウもジョウも困惑気味だ。

 コメントの流れる早さにも驚愕したが、いつも彼らの配信を見ている層とはまるで違う人たちだと思われるノリのコメントにも動揺を隠せない。


「どうしてこんなことになってるんだ? 俺たち何かした?」


「有名配信者にこの配信が拡散されたとかかな」


≪コメ欄も読めないのかよwww≫

≪底辺配信者乙≫

≪顔だけ配信者乙≫

≪ユウとジョウを悪く言わないで!!≫

≪ファンにヨチヨチされてるwww≫

≪だからカメラマン映せってば≫

≪カメラマンはよ!≫

≪ここはユウとジョウのチャンネルなの!!≫

≪二人を見ないなら帰って!!≫

≪厄介ファン乙≫

≪モンペファン乙≫


 事態を把握できていないユウとジョウを非難する視聴者と、いつもユウとジョウのチャンネルを見に来ている擁護派視聴者が、コメント欄で喧嘩を繰り広げ始めた。

 この状況に二人はますます混乱するばかりだ。


「なんか分かんないけど喧嘩してる!?」


「俺たちを置き去りにして盛り上がらないでー。俺たちも混ぜてー」


≪カ・メ・ラ・マ・ン!!≫

≪カメラマン映せwww≫


「カメラマン? なんで?」


 急にカメラマンを映せと言われ、ユウとジョウの混乱は深まるばかりだった。


「カメラマンは俺たちの配信とは関係の無い人だよ。今日初めて会った人」


「うん。撮影会社の人を普通に雇っただけ。だから別に俺たちの配信専用の人とかじゃないけど……カメラマンが見たいってどういうこと?」


≪大当たりのカメラマン引いただけかよwww≫

≪カメラマンどこの会社?≫

≪特定班はよ≫

≪カメラマンはどうでもいいの! ここはユウとジョウのチャンネルなの!!≫

≪カメラマンの顔映して先っちょだけでいいから≫

≪ユウとジョウのチャンネルで下品なことを言わないで!!≫

≪また出たモンペwww≫

≪ヨチヨチヨチヨチ≫


「なんかいつもと違う感じのコメントがいっぱいあるな……?」


「っていうか、何でカメラマンの顔を見たがってるんだ? そこのところを教えてほしいんだけど」


 おかしな状況が気になったユウとジョウは、ダンジョン探索そっちのけでコメント欄を読み始めた。

 その間もコメントの雪崩は止まらない。


≪真剣な顔でコメント読んでる! 私のコメントも読んで!≫

≪だからお前らじゃなくてカメラマンを出せって≫

≪アップに耐えられる顔面強すぎ! さすがユウとジョウ!≫

≪ふーんエッチじゃん≫

≪コメ欄にホモおるで≫

≪ユウくん、ジョウくん、人気配信者になるチャンスだよ! 歌って!≫

≪底辺配信者の歌とか興味ないwww≫


「え、なに? 歌えばいいの?」


「さすがにダンジョン内で歌うのはどうなんだ? 歌えるけどさ」


 このあとユウとジョウはダンジョン内で熱唱をし、コメント欄はそこそこ盛り上がった。

 しかし多くの視聴者が、違うそうじゃない、と二人の配信から去っていったのだった。



   *   *   *



「佐藤君、配信をしよう!!」


 翌日出勤した佐藤を待っていたのは、興奮気味の鈴木課長だった。


「会社紹介のチャンネルでも作るんですか? 僕も社員なのでもちろん協力しますけど」


「会社のチャンネルなのはその通りだけど、投稿するのは会社紹介の動画じゃない。ダンジョン探索だ!」


 鈴木課長の言葉に佐藤は首を傾げる。


「ダンジョン撮影専門の会社がダンジョン探索の様子を配信するのは、実質会社紹介ではありませんか?」


「その通りだが、少し違う。配信するのは『VRダンジョン』だ!」




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