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第13話 鈍いチェリーと小悪魔キャラに失敗した乙女達


 2人の奉仕は体を洗うだけに留まらなかった。


 そう、留まらなかったのだ……。やばかった。


「はひぃ……ふぅ、ふぅ……んぅ」


「だ、大丈夫か希良里きらり……?」


「う、うん……楽しくて」


 人生で初めて味わった快楽は、あまりにも強烈すぎて未だに腰がガクガクと震える。


 手もヤバかったが、女の子の口の中がこれほどまでに甘美な感触だったとは知らなかった。


 己の右手など比較対象にすらならない快感が脳髄をとろけさせ、未だにビリビリと腰を痺れさせている。


希良里きらり夢中になりすぎ~。私が入る隙間なかったじゃん」

「ごめ……んねぇ有紗ありさちゃん……、あとで、埋め合わせ、するからぁ」


「とりあえずシャワーで流して湯船に浸かろうか。全身ドロドロだ」


 未だに興奮冷めやらぬ三人であるが、これ以上続けると希良里きらりが大変なことになりそうだったので理性を総動員して介助した。


 シャワーで全身を洗い流し、石けんを泡立てたスポンジで優しくこびり付いたものを洗い落としていく。


「へへ~、兄ちゃんの濃厚練乳でドロドロだよぉ……髪の毛に引っ付くと大変だね♪」


「お、おう、すまんな。あんまりにも気持ち良くて」


「そっかぁ♡ 嬉しいなぁ♡」


 キラキラした笑顔でそういう希良里きらりに胸がときめく。


 俺は希良里きらりの彼氏でもなんでもないのだが、こんな表情を他の男にも向けたことがあるのかもしれないと考えると、ズクズクとした嫉妬心が湧き上がってきた。


「にーちゃんどうかした?」

「ん、いやなんでもない」


 イカンイカン。俺は竿役。二人の恋人ではないのだ。


 有紗ありさの声で我に返った俺は、湧き上がる黒い感情を抑え込んで二人の身体を洗い流すことに専念した。


 ◇◇◇◇◇


「ふわぁ……気持ち良い~♪」


 風呂から上がり、いつものように有紗ありさの髪をドライヤーで乾かしながら櫛を通す。


 シャンプーの良い香りが女の子特有の甘い芳香と混じって鼻腔をくすぐり、再びイケない衝動が湧き上がってくるのを感じた。


 コットン生地のワンピースパジャマのスカート部分から覗く生足が艶かしい。


 女の子座りをしながら心地良さげに鼻歌を歌う有紗ありさは俺に髪を乾かされながら爪を切っていた。


 胸元が大きく開いたパジャマから零れる巨大な谷間に視線を向けないように我慢するのが大変だ。


「よし、できたぞ」


「ありがとにーちゃん♪」


「兄ちゃん……次、お願いしていい?」

「ああ、もちろんだよ希良里きらり。おいで」

「わーい♪」


 有紗ありさの髪を梳き終わり、希良里きらりの後ろに回り込む。

 有紗ありさとお揃いで色違いのワンピースパジャマを着た希良里きらりの巨峰が座ると同時にたゆん♪と揺れ、先ほどの水着姿を思い出してしまった。



 こうして子どもの頃と同じように世話をしていると先ほどまでの黒い嫉妬心は霧散して親心のような尊い感情がわき上がってきた。


 いかんな。俺、どうやら二人の事が大好きらしい。


 有紗ありさ希良里きらりも、俺の知らないところで既に彼氏を作ってセックスも経験済みなのはほぼ間違いない。


 先ほどの反応を見る限り、男のペニスを初めて見たような驚き方をしていたようにも見えたが、恐らく俺のがデカいからビックリしただけだろう。


 希良里きらりの上手さは一朝一夕で身につくようなものではない気がする。


 確かな技術と、男の肉体構造を理解した知識と経験がないとあんなテクニックは出せないだろう。


 あのあと有紗ありさにも同じことをしてもらったが、俺のが大きすぎるからかあまり上手くできなかったようだ。


 それでもどうやれば良いのかはちゃんと理解していた。

 つまり知識と経験があるってことだ。


 ダメだな俺。二人が処女じゃなかったことにここまで黒い気持ちになるなんて思わなかった……。


 自分が嫌になる。童貞とバカにされても致し方なしだ。


「にーちゃん♡ ……チュ♡」


 俺があれこれとウジウジ考えていると、頬にフンワリと柔らかい感触が触れる。


 濡れた唇を俺の頬に押し付けて、有紗ありさが優しく微笑みながら背中にくっ付いてきた。


有紗ありさ、どうした?」


「にーちゃん、なんか暗い顔してたから。何考えてたの?」


「ごめんごめん、大したことじゃないから」


「兄ちゃん、大丈夫?」


 俺のことを心配してくれたのか希良里きらりも正面から抱き締めてくる。


 有紗ありさとは反対側の頬に濡れた唇が触れ、優しく微笑みながら何度も何度もキスをする。


「にーちゃん、何考えてるか……当ててあげよーか」


 耳元で囁く有紗ありさの声にゾクゾクしそうになる。


 努めて平静を装うが、有紗ありさにはバレバレだったらしい。


 クチュ……という口の中の唾液音が響き、ゾクリと鼓膜を振動させる。


 そして続く言葉は俺の心を大いに揺さぶった。


「私達が、処女かどうか……♡」


 図星すぎてギクリとなった。見透かされた居心地の悪さで目を逸らさずにはいられない。


「ふふ……有紗ありさ希良里きらりも、今まで何人の男とセックスしたんだろう。希良里きらりのご奉仕は、どれだけの男で経験を積んだんだろう……。有紗ありさが知ってる男の中で、俺は何番目なんだろうって……♡」


 全部大当たりだった。有紗ありさはエスパーなのか。

 それとも俺が分かり安すぎるだけなのか。


 有紗ありさにとっては、童貞の俺の考えなど手に取るのように分かるってことか……。


「ねえにーちゃん、何人だと思う?」


「そ、そんなの分かるわけないじゃないか……」


 ある意味で、蚊帳の外に追い出されていた事実を突きつけられた気分だった。


 俺はずっと二人の側にいた。


 一緒に帰ることも多かったし、プライベートで遊んだりもしてきた。


 だけど、二人はいつの間にか大人になっていた。


 悲しいような、腹立たしいような、情けないような……。


 複雑な気分だ。


「にーちゃんって、やっぱり優しいね」

「うん?」


「本当は寂しいクセに」


「もう有紗ありさちゃん。あんまり兄ちゃんに意地悪ばっかり言っちゃダメだよ」


「ごめんごめん。ねえ、にーちゃん」


「なんだ?」


「日曜日のデート、頑張ってくれたら、有紗ありさ達がとびっきりのご褒美あげる♡」


「ご褒美か。そりゃ楽しみだな。ちゃんとプランは練ってあるよ」


「うん。ごめんねにーちゃん、意地悪言っちゃった」


「気にするな。俺はお前達が幸せならそれで良かったんだ。俺がどういう気持ちかは関係無いさ」

「にーちゃん、やっぱり優しいね。あのね……」


「あのね兄ちゃん」

「どうした希良里きらり


「私達、兄ちゃんが悲しくなるようなことはしてないからね」


「うん? どういう意味だ?」


「まだ内緒♡ 日曜日のお楽しみだよ♡ ちゅ♡」


 それから二人は何度も何度も頬にキスをしてくれた。



 まるで俺が黒い感情を持て余すのを慰めるように。


 二人が俺に向けている感情がどういうものなのか、鈍い俺には分からない。


 だけど悪いものではないし、親愛の情があるのはちゃんと伝わった。


 そうだな。二人が処女かそうじゃないかなんて些細な問題だろう。


 子どもの頃と同じように甘えてくる二人を見ていると、自分がどれだけ器の小さいことでウジウジしていたのかを思い知った。


 少なくとも、こんなことをするんだから現在進行形で男のパートナーはいないと考えて良いはずだ。


 そしてレズビアンである二人が、俺に身体をある程度許していることが、二人の俺に対する信頼の表れであると考えるべきだ。


 その頃になると俺の黒い感情は完全に霧散し、つまらないことを考えていた自分を反省しながら、その日は帰宅の途についた。


 ◇◇◇◇◇


「じゃあ兄ちゃん、お休みなさい」

「ああ、お休み」

「お休みにーちゃん♡」

「お休み」


 パタン……


 順平を部屋へと見送り、有紗ありさ希良里きらりは反省会をするため自室に戻る。


 二人一緒にベッドに倒れ込み、今日の向かい合って手を繋いだ。



「失敗しちゃったね、希良里きらり

「あんな言い方したら兄ちゃんが疑心暗鬼になっちゃうよ。兄ちゃんにあんな悲しい顔させちゃダメ。"匂わせ"はあくまでエッセンスなんだから……まあ、私もお口のときに嬉しくて暴走しちゃったから人の事いえないけどさ……あれじゃ経験豊富のビッチだって誤解されちゃうかも」


「ごめん。にーちゃんの気持ちが嬉しくって、つい……。どうする? もう処女だってカミングアウトしちゃう? でも結構バレバレだと思ってたけど、にーちゃん気付いてないっぽいし……にーちゃんってネガティブだけど、あそこまでだとは思わなかったよ」

「うーん、いっぱい悲しませちゃったし、最高の形で喜んで欲しいよね。普通に伝えるんじゃなくて、もう少し嬉しいサプライズにしたいかも」


「そうだね。じゃあさっき言ってた通り、日曜日のご褒美はそれでいこうか」


「うん。でもそれだけだと足りないよ。私達二人が、兄ちゃんのために全部あげるって気持ちをしっかりと伝える演出しなくっちゃ」


「演出?」


「うん。私達が、【兄ちゃん以外の男なんて、今も昔も全然興味ないんだよ。誰にも触らせてないんだよ】って、ちゃんと伝わるように。それでね、ちょっと考えたんだけど」


 希良里きらりはベッドから起き上がってクローゼットを開いた。

 下段にある引き出しを開き、ごそごそと何かを取り出す。


「これ、私達が処女だってことを伝えるのに良いと思わない?」


「これって……」


 希良里きらりから渡されたものを手に取ってマジマジと見つめる。


 見慣れない物体を前に有紗ありさは疑問符を浮かべるが、その形状を観察するうちに思い当たった。


「あ、これってもしかして……こんなのどうやって手に入れたの?」


「普通にネットで買えるよ。ちょっとエッチだと思わない?」


「いいかも。にーちゃん喜んでくれるかな?」


「きっとイケるよ。兄ちゃんの動画コレクションの中に、こういうの使ったプレイあったし」


「そ、そうだっけ?」


「そうだよ。隠しフォルダの中に更にシークレットファイルがあって、そこに入ってた」


「よ、よく見つけたね。そんなところに隠すくらいだからよっぽど好きなんだ……」


「あとは、これ……」


 希良里きらりは更にクローゼットの奥から何やら取り出す。


 有紗ありさがのぞき込むと、それは白とピンクの「ある物」だった。


 ジャラリと音を立てた「それ」を見た有紗ありさは目の色が変わる。


 興奮と、期待……。二つの感情が有紗ありさの身体を熱くする。


 ふと見上げると、希良里きらりも同じ表情をしている事に気が付いた。


「やっぱり私達、考えてること同じだね」


「え?」


 有紗ありさは意味ありげに立ち上がり、部屋の隅に置いてあるキャリーケースの留め具を外す。


 着替えなどが入っているのかと思いのぞき込む希良里きらり


「にーちゃんのエッチな動画でさ、こういうの着てるヤツ、多くなかった?」


 それを見た瞬間、有紗ありさも同じ事を考えていたんだと笑いがこみ上げてしまう。


「あはは。凄い有紗ありさちゃん。やっぱり私達、兄ちゃんに動画みたいなことして欲しいって思ってたんだ」


「兄ちゃんの性癖って結構ありふれてると思うけど、実際やってる人はどのくらい居るんだろうね」


「わかんない。わかんないけど、そんなこと関係無いよね。世界で私達だけでも、全然いいじゃない」


「そうだね。日曜日、楽しみだね♡」

「うん、兄ちゃんに喜んでもらえるように、頑張ろうね♡」


 誓い合う二人は口付けをかわし、来る日曜日のデートを楽しみにしながら眠りについた。



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