5月24日
ブータロウを呼び出す。
もちろん海の側だ。自殺の名所らしい。岸壁に打ちつける波飛沫が私の顔にまで飛んでくる。
潮風はしょっぱい。涙の味だ。なかなか理想のBLが進展しない私の心の涙だと思った。
そんな感傷に浸ってたのに、KYなデヴが「昨日と同じやりとりはいいですから! は、早く娘の報告書を!」とか言ってきたので、「“やりとり”より、“焼き鳥”の方が好きそうな体型だろうが」と腹パンした。
泣きながら嘔吐しているブータロウを見て、私は泣きたくなった。
なんでこんなに私が苦労させられなければならないのかと思うと、腹が立って仕方がない。
さっさと嫌な用件は済ましてしまった方がいい。
私はジュラルミンケースから、A3の紐付き茶封筒を取り出してブータロウに手渡す。
「うぐぐ…」と、ブータロウは恐る恐る封筒を開いた。
中はやっぱり名探偵の報告書だ。
ブータロウはクリップで留められた写真を見て、「ま、まさか…ウソだぁ!」と叫び声を上げる。
ここからは説明タイムだ。
率直に言うと、ブータロウの娘(ロリ)は父親の留守をいいことにパパ活をしていた。
父親の仕送りで、ゲーセンだ、カラオケだ、プチコスメだ、ご褒美旅行だ、女子会だと満喫しているだけでなく、とあるスーパーのダンディな副店長を相手にパパ活していた。
報告書は秒刻みに娘の行動を書き出してあり、写真は某有名レストランでとんでもねぇ高級料理(もちろん軽く数万超え)の爆食に終始しており、元の可憐な細身のアイドル風の見た目はうって変わり、ブクブクと肥え太ってしまい、ハン・●ロに嫌がらせしているジャ●・ザ・ハットにしか見えない。
「あ、おお…」なんて声にならない声を漏らして、報告書を読むブータロウ。涙か鼻水が涎か分からないが、書面をめくる度に紙が濡れる。
「家庭崩壊だ! もう! 生きている意味がないー! タヒにたい!!」とか言い出したんで、「分かった。なら私が
「どうしてもタヒにたいのなら、この世のありとあらゆる苦痛を体験して逝って貰う」と言ったら、「なんで?」と聞かれたんで、「勿体ないから」と答えた。ブータロウは鼻水をくったらかせて大人しくなった。
私の優しさが伝わってよかった。1人の命を助けることができた。