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5月29日(その2)

5月29日(その2)


 また日記がページをまたいでしまった。


 さすがに2日も家に帰らないのはどうかと思ったんで、戻ってみたらお母さんに無断外泊を叱られた。


 「私、勇者だよ」と言ったら、「それでもお仲間はみんな男性でしょ。ひとりでも女の子がいてくれたら」みたいなこと言ってたけど、それなら魔王退治の旅に出すなと思う。箱入り娘でいさせてくれよ。


 おじいちゃんと目が合ったんで、「おじいちゃんが若い頃に頑張ってたら、もっと年金もらえて楽な暮らしができたのになー」と呟いたら、なぜか1万円くれた。こんなんで誤魔化せると思うなよ。


 旅館に戻ると、やっぱまだ揉めていた。今度は料理長が頃されたらしい。


 「ご飯の時、困るね」と言ったら、全員が「え?」みたいな顔をして見てきた。あー、そうか。副料理長がいるから問題ないのか。


 温泉最高だったから、もう1泊しようかどうか悩んでると、なんかヒゲとメガネが「ロビーに集まって下さい。部屋に戻るのは危険です」とか言ってた。


 カレキに「ブータロウは?」と聞いたら首を横に振った。


 ワニンゴとカラテは、殺人鬼が出てきたらどう戦うのかという話でなんか盛り上がってる。そういうの好きだよね、男って。


 正直あんま興味なかったけど、料理長がどうやって頃されたのか聞いたら、カレキが「舟盛りに全裸で乗せられた姿で……」とか言ってたんで、そういや昨日の晩ご飯の時、トイレに行く通りすがりに厨房でそんなの見た覚えがある。てっきり、個人の趣味プレイなのかと思ってた。


 ヒゲが「女将に続き、料理長まで頃されました…」とか始めたんで、「女将の前に、料理長だよ」と言ったら、「素人は黙ってなさい!」とか生意気言ってきたんでビンタした。


 メガネが「犯人はこの中にいる!」とか言ってたんで、「当たり前の話をするな」とビンタした。


 そうしたら、旅館のスタッフが「昨日からアンタの仲間が見えないじゃないか! 犯人はきっとそいつだ!」とか叫んだんでビンタした。


 ようやく静かになったんで、私は「そんなことより大事な話がある」と告げた。





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