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5月29日(その3)

5月29日(その3)


 「そんなことより大事な話がある」と伝えると、「女将と料理長を頃した犯人よりも?」と聞かれたんで私は「当たり前だろ。犯人なんかどうでもいい」と頷く。


 私は全員を見回す。


 誰もが私の次の言葉を待っていた。


 「昨夜とんでもないことをしでかした人物がここにいる」と言うと、ヒゲが「まさか…」と、メガネが「犯人ではなく、真犯人を…」とか呟いている。


 「そう。真犯人はコイツだ」と、ワニンゴを指差すと、どうしてか全員が「なんだって!?」と叫んでワニンゴを取り押さえた。


 「ま、待ってくれ! 俺は何も知らない!」と言うワニンゴ。私は「しらばっくれるな。証拠はある」と迫ると、「本当に知らない!」とか、まさに盗人猛々しいとはこの事だよね。


 「昨日、私たちが食べたアワビの総数は42個。だが、殻の枚数は41枚しかなかった」と説明する。ヒゲが「残りの1枚は…?」とか言うんで、コイツは頭が悪いな、本当に探偵なのかと思った。


 ワニンゴのポケットを調べろと命じると、メガネが「あれれ〜! あったよぉ!」とか言いながら、ワニンゴからビニール袋に入ったアワビを取り出す。


 カレキが「こ、これは……」とか言ってるんで、私はトドメの一撃を放つ。


 「そう。昨日、フライングしてオ●禁命令を破ったんだ。コレを使ってね」と言うと、ワニンゴの顔が真っ青になる。


 「食い物で遊ぶなって、ママから教わらなかったのか!」と、ワニンゴをビンタした。


 ワニンゴは泣きながら、「教わったさ。けど、そのママを思い出して……」とか言っている。ビニール袋に入ったアワビの“色合い”がママのにそっくりだったらしい。


 そう。この謎の答えがこれだ。


 つまり、ワニンゴはマザコンだったのだ。


 「ママを食欲的にも、性欲的にも食い物にしてたわけだ。最低だぞ、ワニンゴ」と言ったら咽び泣いていた。そして、「罰としてオ●禁追加1ヶ月だ」と伝えたら、「マンマァーッ!!!」とさらに泣いた。私はお前のママじゃない。そしてドドメ色でもない。


 しかし、同情はしない。罪には罰だ。当然だ。


 ヒゲとメガネが「は? 真犯人は?」と聞いてくるので、ワニンゴを指差したら、「いや、女将と料理長を頃した……」とか意味不明なことを言ってきたんで、「そんなの私が知るわけないだろ」と怒った。

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