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5月31日

5月31日


 私たちは馬車で急ぐ。


 ブータロウ……どうして?


 ああ、何がお前をそこまで追い詰めてしまったというの?


 馬の手綱を握ってるメガネとヒゲに、「なるだけ急いで! ブータロウの元に!」と命ずる。


 あー、うぇっぷ。


 今日は朝食を食べ過ぎたせいで、馬車の揺れがだいぶキツイ。


 朝に二度寝して、お昼過ぎに出たけど、まだ消化しきってない感じ。朝からメロンとか出てきたから、調子に乗っておかわりしたのがいけなかった。


 「やっぱ、もう少し速度ゆるめて。あんま振動させないで」と命じ直す。


 カレキが「差し出がましいようですが、瞬間移動魔法を使えば……」とか言ってきたんで、私はカバンから1冊の本を取り出して渡す。


 それは、『迸れエロス』という小説だ。これはエロスという中年が、ソリチンティウスの命を助けるためにほぼ全裸で走りまくり、それに感動した殿様が「よくやった。感動した」と言って、3人がホモダチになるという内容だ。


 カレキは「こ、これが何か?」とか理解できてなかった様子なんで、「瞬間移動魔法なんて使ったら感動もなんもないだろ。一生懸命に“愛する人を思って汗だくで走る”……ここにみんな感動するんだよ」と言ったら、カレキは衝撃を受けた顔をしていた。


 そして、カレキはローブを脱ぐと、フンドシ(赤フン)一丁になって、「ちょっと走ります」と馬車から飛び降りて行った。


 ヒゲが「あの年齢で走って大丈夫なんで?」とか聞いてきたんで、「タヒんでも蘇生させられる」と言ったら鼻水をくったらかせて黙った。


 ワニンゴは相変わらず意味不明なことを叫んでいたから、カラテに命じて、叫ぶたびに両乳首をつまませた。最初は痛がっていたけど、だんだんと叫び声に色気が混じってくるようになった。


 メガネが何か言いたそうに馬車の中を見てきたんで、「何だ? あまり見てると拝観料とんぞ」と言ったら、「てやんでぃ、バァロー」とか言ってそっぽを向いてんで、こっちに向き直させてビンタした。


 メガネのメガネがクルクルと飛んでって、カレキの顔に装着された。なんか3割増に凛々しく……別にそんな風に見えもしなかった。

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