6月1日
目的地であるスーパー“トトイチ”。
ブチ切れたブータロウは、商人を超えた伝説のスーパー商人となり、ロマンスグレーな副店長に連続エネルギー弾を浴びせ、ダブル・ハンマーパンチ(組み合わせた手と手を、頭上から振り下ろす攻撃。正式名称は不明)で地面に叩きつけた……とこまではよかった。
馬車から見えた感じだと、明らかにブータロウ優勢だった。
けど、いま辿り着いた私たちの目の前では、スーパーの店先で身体をくの字に曲げ、クレーターみたいな割れ目に横たわって、ブスブスと煙を立ち上らせて気絶していた。倒れていたのは説明するまでもなく、ブータロウだった。
ヒゲが「ヤ〇チャしゃがって…」とドヤ顔で言ったのにイラッとしてビンタする。
「ブータロウよぉーい(´;ω;`)」とカレキが涙と鼻水を飛び散らかせて側に寄ろうとしたけど、フルマラソンが膝にきたらしく、プルプルしてなかなか前に進めない。
代わりにワニンゴ(俺は正気に戻った状態)と、カラテがブータロウの身体を見やる。「スーパー化した商人がやられるなんて……」とか、「これは普通のキズじゃない」みたいなことやってるけど、本当にバトル好きは困る。
「勇者! 息がない! 蘇生を!」みたいなことをワニンゴが言うてきたんで、「黙れ。マザコン。誰に命令してる。お前がマウス・トゥ・マウスで蘇生しろ」と言うたら、トラウマを思い出して「マァマー!」と泣いていた。
なら、カラテにやれと命じたら、「は、初めては、す、好きな人とじゃないとぉー」とメガネを見ていた。気持ちは分かるからこれは不問にする。
カレキが「ワシがぁ!」と言ってるけど、息も絶え絶えでむしろこっちの方が人工呼吸必要な感じだ。
「副店長、強かったんだね」と私は言ったけど、チラッとフードコート見やったら、ダストボックスに副店長が入っていた。分別不要なんで問題はない。
つまり、ブータロウをヤッたのは……
「私ですよ。よくもやってくれましたね。勇者御一行」とか、低い声が聞こえてきて、デカい大男が現れた。
そう。これが魔王軍最高幹部、ガチムチ店長との出会いになったんだった。