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6月2日

6月2日


 昨日から、ガチムチ店長との激しい戦いが繰り広げられている。


 ワニンゴとカラテのタッグが、「「うおりゃりゃりゃッ!」」とパンチ・キックの連打を繰り出す。


 カレキがその間に「地獄の貴公子よ、我が呼び掛けに応え…」とか真顔で痛々しい大魔法を詠唱している。


 ヒゲとメガネは、メガネが麻酔注射をヒゲに打って、どうやら打つ量を間違えたらしく、昏睡状態になって慌てて救急車を呼んでいた。「うわぁーん! 睡眠系の探偵じゃなくて、永眠の探偵になっちゃうよぉ!」とか、いまさらガキであるアピールしていたけど、国家権力に連れて行かれた。今日はもう帰ってこないだろう。


 と、それより、カレキの大魔法が炸裂して、ワニンゴが「やったか……」とか言うてたけど、そんな前振りしたせいで、15分くらいモウモウと煙立てた後に、「フフフ、この程度ですか」とか言いながら無傷で出てくる。


 カレキがゴクリと息を呑んで、「ワシの究極魔法が……」みたいなこと言うてたけど、私の無詠唱下級魔法の半分の威力もなさそうなショボい魔法だった。


 その間、私はフードコートで時間を潰す。ス●バもド●ールもないみたいで、よく分からん地元カフェでアイスラテを頼んだら不味かった。


 パートのおばちゃん(ミスター・レディ)が、「店長も副店長もいないとクレーム対応が…」と困ってたんで、私が代わりに対応してあげる。


 サービスカウンターで、「ポイントカードの作り方が分かんねぇ! 教えろ! “すまほ”? そんなもん持ってねぇ!!」とガラケー振り回して怒り狂っているジジイをビンタした。


 ジジイが「なんてことする! お客さまは神様だろうが!」と叫んだんで、「神様なら自分でなんとかしろ。自分が分かんないものはやるな。分かる人間しかポイントの恩恵は受けられないんだ」と教えてやる。


 他にも──



『備蓄米どうして扱ってねぇんだ! 1,800円にしろ!』


『無料給水器の紙コップがねぇぞ! この野郎!』 


『クーラー効きすぎだ! 温度上げろ!』


『クーラー効いてねぇぞ! 温度下げろ!』


『なんでコピー機おいてねぇんだ! 困るだろ!』



 こういったワガママにはビンタだ。


 お客さまは神様じゃない。


 私こそが勇者。


 勇者は万能だ。


 だからこそ、私こそが神様だ。


 お前たちモブにクレームを言う権利などない。


 こうして、いつの間にか私はスーパー“トトイチ”の『名誉店長』と崇められるようになっていた。

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